⭐︎火はこちらから点ける
アイは風樹の街から、双眼鏡で鉱山を見つめていた。
ナギの連絡を受けてから一週間、そして土の国の宣誓布告があってから三日目の今日。
政府や火炎の国と連携し、秘密裏に鉱山を包囲していた。
そして今朝、ナギから再び指示がある。
『鉱山を吹き飛ばすぞ』
「……頭は大丈夫か?」
ナギの言葉に、反射的に突っ込みを入れる。しかしそれは冗談ではなかった。
『先日、正式に同盟を組んだだろ。上層部に腹を括れと伝えろ』
一週間前、ナギに『ちょっと調べてほしい事がある』と言われ、その次に出てきた言葉が
『風の国の上層部と、アルカナが鉱山資源について手を組んでる』
であった。
『今は殆ど売れない筈の硫黄を、アルカナがわざわざ買い取ってる筈だ』
一企業と言えど、悪名高いアルカナに資源を売っている。それが周囲に知られれば、当然国の信用や評判は下げるだろう。
故にバレない様、密輸と言う形を取っていたのだ。
さらに念を入れて、"風の国から土の国へ"の密輸として。だが、
『これが確かなら、アルカナの方がもう一枚上手だ』
そして、急いで政府に掛け合い、鉱山を押さえるようアイに言ってきた。
その時にアイが呟いた台詞が「ナギに関わると難題を突きつけられている」発言である。
そして新たに出された指示が
『指示した所に、押収した物を置いといてくれーー火はこちらから点ける』
押収した物、それは硫黄とーーダイナマイトである。
政府の実行部隊と共に、アルカナを取り押さえに入坑したアイは、ナギの言っていた事を理解した。
そして今しがた、爆発音がした。
爆発する前に光輪が現れたのは、おそらくアイの見間違えではないだろう。




