小噺④-1
「解説:今は俺たちに守られてくれ」の後の話。
ルカと日向の会話後、ナギがアイと会う前の話です。
俺は紫を連れて、ミネルバの梟の本部として使っている建物にいた。
「…ナギは?」
光の無い瞳で、俺を見上げてくる紫。俺は「いないよ」と微笑んだ。
「あいつは此処には来ない」
正確には来れなくなった、だが。
紫にとってナギは村崎の敵。憎くて仕方がないだろう。と、思っていたら
「そう…」
少しだけトーンが下がった声で紫は呟いた。え、と目を少しだけ見開く俺。
もしかして、村崎に何か良からぬ事でもされていたのではないかーー
自分達が知らなかっただけで、村崎は特殊な性癖の持ち主だったのかもしれない。
そう思ったが、
「違うから」
無表情で言われる。
紫に思考を読まれた事が、少し恥ずかしかった。
その後、紫を教育部に連れて行った。
ここは保護した人工能力者に、必要最低限の生活や教育を受けされる部署だ。保護する年齢がたいてい10歳未満である事から保育部と呼ぶ者もいる。
ちなみに、だいたい16歳くらいで独り立ちするように教育を施していた。そのままミネルバの梟に就職してもいいし、出て行っても構わない。
過去にはパティシエになると言って、専門学校に行った奴もいたらしい。その後、就職した店のスイーツをナギがいたく気に入ったので、今でもたまに顔を合わせる。
と言うか、俺の能力「フェアリーリング」でたまに買いに行かされる。
最近はジェラートも扱い出したらしく、ナギは「一度戻って食べたい」と嘆いていた。
たかだかジェラートの為に異世界から帰ってくるなと、流石に止めたが。
余談だが、流石の俺も異世界転移は出来ない。
担当者に紫を引き渡すと、俺は執務室へと戻り仕事に取りかかった。
「無事に手続きが終わってよかった」
そう安堵したのも束の間。
数日後、教育部から上がってきた報告に、俺は頭を抱えるのだった。
「紫がそんな事を?」
一応ミネルバの梟のトップの筈なのだが、俺は教育部に呼び出されていた。
紫が、同じ教育過程を受けているクラスメイトに怪我をされたと言う。
「えぇ、しかも怪我をした子は氷雪の貴族の方で…」
よりにもよって貴族っ!!しかも氷雪かよ…。俺は項垂れた。
小噺④-4まで続きます。
公開予約状況
8/3 19:00 ④-2
8/4 19:00 ④-3
8/5 19:00 ④-4
8/6 19:00 本編開始




