♢神になれるのか?♢
転移したナギとルカは、土の国にいた。フェアリーリングで繋がっていたのは、土の国で事前に取っていた宿の中である。
私達はコートやら装備を外した。
「で、あいつは誰なんだ?」
ようやく腰を下ろすと、ルカの開口一番に出たのがそれだった。
私は部屋に設置されているティーポットにお湯を注ぐ。
「翼を持つ蛇ーー次期ケツァルコアトルの称号を貰う者だよ」
真理を基準に、三種類の存在に分けられる。
一つ、理の上に立つ者
一つ、理と同等の者
一つ、理の下の者
理の上に立つ者、同等の者は上位の存在として認知されている。その中で理の上に立つ者は極一部。
それらは神の名を語る。
「アテナ様なんかは、その中でも上位だな。何せオリュンポスの一員だ」
「ケツァルコアトルだって、アラスカ神話では上位神だろ」
そう、ヒナタがすでに称号を持っていたならーー理の上に立つ存在だったなら、私達は今この場に存在していない。
奴はまだ神に至れていない。神の眷属に手を出すと言うことは、その神に盾つくと言う事になる。
神もどきにまだそこまでの事は出来ない。
私は紅茶を啜った。
「上位の存在になるには、手順がある。生半可ではない覚悟と、実力が問われるんだ」
「…お前はその方法を知っているのか」
さぁね、と私は惚けた。
「少なくとも、ヒナタはすでに相当の対価を払ってる。だけどまだ足りていない」
スタートは理の下の存在から。1つ位を上げるのに相当な執着が必要だ。ーーそう、大切なのは執着心。
「俺たちにも可能なのか?」
「今世では無理だな」
「徳を積んで、来世へ持ち越しって事か?」
非常におしい。
「アテナ様やヒナタを見て、前世で徳を積んだ聖人の様に見えるか?」
「……」
ルカの反応に、私は「だよな」と笑った。
「どちらかと言うと悪行を重ねていそうだ…」
「性格に難があっただろうとは、予想は出来るよな」
ルカは私の入れた紅茶に、砂糖を入れた。
「ヒナタは神もどきとは言え、いずれ神にはなれるのか?」
「アイが死ねば、なるんじゃない?」
ヒナタが神に至れていないのは、まだ人としての価値観から抜け出せていないからだ。
「価値観と言うより、情だな」
「情?」
ルカは首を傾げる。私は紅茶の水面を眺めた。
「情の種類が違う。アテナ様は少なからず私に情を抱いているが、それは哀れみと期待だ」
期待と言っても、"自分を楽しませてくれるかもしれない"と言う期待。
「だが、ヒナタはアイに恋情を抱いている」
下位の者に、慈愛を抱くのとは違う。
親が子に抱く愛しさとは違う。
「アイが亡くなったら、神になれるのか?」
ルカの疑問に、私は「さぁな」と首を竦めた。
次回は小噺です。




