解説:全てに復讐しろと言った
初めて、能力使用時に名前を唱える奴が現れます。
初回から出てるルカ。ようやく能力、お披露目です。
ルカが驚愕する。そして、相手ーーヒナタは目を細めた。
「貴様、何者だ?ーー天候の村に何か企んでいるのか」
その場をヒナタの威圧感が支配した。高位の存在は、威嚇するだけで相手の動きを封じる。だが
「アテナ様と比べたらまだまだだな、翼を持つ蛇」
「何故、俺の名を…」
私は威圧に耐えながら「この間、アテナ様と会ってね」と応えた。ルカを横目で見ると、目が合う。
私は口の端を上げた。
「聞いたよ、まだ神の称号を獲得していないらしいな。そんなあんたが、知恵の女神の眷属である私達に手を出せるとでも?」
「…そっちは違うだろ」
ヒナタはルカを示した。あちゃー、バレたか。折角、能力を使ったのに。
しかしヒナタは攻撃するような素振りは見せなかった。ただし
「天候の村に何かすればーー」
「天候の村って言うより、アイに、だろ」
ニヤリと、私は更に笑みを深めた。ルカの方は見ず、ヒナタに集中する。
「酷いなあ。私はアイの為になる助言ばかりしているのに」
「ガキを助ける方法の事か?お粗末過ぎて笑えもしなかったぞ」
そりゃそうだ。アイに話した内容で実際に救えるなど思っていない。
私が狙っていたのはーー
「あんたなら、アイの為に動くだろう?」
「……俺が動く事込みでの助言か」
苦々しく呟くヒナタに、私は嘲笑を浮かべた。
「感謝しろよな。
正体がバレたくない貴方の為に、"アイが魔法で"助けた様に細工出来るよう、誘導してやったんだから!」
空気で絶縁?しかも見えない所で、動いている物に魔法をかける?そんなの出来る筈がない。
だが、理の人ならそんな事せずにーー電気兎の発電を一時的に抑える事など造作もない。
ヒナタはキッと睨んだ。
「今後、アイに関わるな」
「それは出来ない相談だな。何せアテナ様との契約に大きく関わっている」
「なんだと」
「不思議だと思わないのか?私とアイの髪色が同じな事に」
私は多少演技がかった様子で、言葉を続けた。
「あの戦いの女神が、意味も無く髪色を変えると思っているのか?」
そう私が宣言したのと同時に、ルカは能力を発動した。
「妖精の輪」
人が通れる程の大きな光輪が出現する。ルカは私に目配りすると、その輪に飛び込んだ。その後を、私が続く。
「アテナ様は、全てに復讐しろと言った」
私は去り際に、そう言い残したのだった。
ちなみに妖精の輪は、エルフリングとも言います。
そして菌輪の事です。キノコが環状をなして発生する現象。
神話とか民話的には、妖精の踊った跡として出来る、みたいな事になってます。また、輪をくぐると別世界やタイムスリップすると言った内容もあるのだとか。
ルカの能力としては、後者になります。
分かりにくい伏線だった箇所その②
始めにチラッと出てきた中将の名前『フルメン』は、ラテン語で落雷を表します。




