★触れたりする?
そして冒頭に戻るのである。
すでに陽は暮れている。前向きに考えれば、山中での野宿を回避出来たと思おう。
閉じ込められたのは、自然に出来た洞窟を利用して作られた牢屋であり、殆ど野宿に近い気がしなくもないが。
動物にーー殊に熊に襲われる危険がなくなっただけでもマシだ。
「と言うか、アイツら…」
捕まった際、奴等は私の顔を見て戸惑っていた。
風の国で、私の顔に見覚えがあると言えばーー
「此処って、天候の村か?」
そう呟いたのと同時に、
「帰ってきて、早々に呼び出されたと思ったら」
牢の外から、声を掛けられる。顔を上げるとそこには
「アイ…」
天候の村、それは風神の姫君の出身地である。
アイのお陰で、私はなんとか牢から出して貰った。罠は動物と侵入者対策を兼ねているらしい。
「それにしては、新そうな罠だったな。そんなに掛かるのか?」
何がかかるかは、あえて言わない。村の周囲を見たが、杭や柵が村を囲うように沢山あった。アイは「あぁ、うん…」と歯切れの悪そうに応える。
「ちなみに電気柵まであったけど、此処って電気通ってるのか?」
「通電してない程、田舎じゃないわっ!それに電気兎が近くに棲んでいるんだ」
開拓時代から、お世話になっているらしい。
ちなみに、電気を発する生き物で有名どころと言えば、電気鰻や電気鮎だ。兎とは珍しい。
と思ったが、そう言えば以前、電気ネズミを見た事があった。ハツカネズミの様で可愛かったのを覚えている。
「触れたりする?」
少しだけ期待して聞いてみれば、
「死にたいならどうぞ」
と、アイは素っ気なく返した。
どうやら、電気ネズミなんかと比べ物にならないくらいの電圧らしい。
私は「残念…」と首を竦めたのだった。
今回の解説回は、7/30 19時に投稿予約しました。




