★乗り継ぎありかぁ
風の国の移動手段は主に2つに分類される。
一つは山を貫通して作った鉄道系。もう一つはロープウェイだ。
地図で見ると近そうな街も、高低差を考えると実は移動時間がかかったりする。逆に遠くだが、山の麓にある街なんかは鉄道ですぐに着く。
「乗り継ぎありかぁ」
しかし、鉄道一本で出国できる訳ではない。
風花から近くの街まで行き、ロープウェイに乗って出国手続きを行う街に向かう。その後、入国同様列車に乗って出国だ。
つまり鉄道、ロープウェイ、鉄道と言う2回乗り換え。
しかも鉄道からロープウェイへ乗り継ぐ為には、駅がある麓からロープウェイの乗り場まで徒歩で向かうのだ。
当然だが、ロープウェイの乗り場は山の頂上辺り。高所に位置する。
「シャトルバスとか出てないのかよ…」
私はジッと地図を見つめた。
「軍所属と言えど、私は頭脳派なんだ…」
こんな重労働は、私の仕事ではないと叫びたくなる。
以前、調査で火の国の森林に入ったが、あそこの傾斜と比べ物にならない。雨は降っていないから泥濘んではいないが、落ち葉が多くて歩き難かった。
「てか、ここどこ?」
麓を発ってから、そこそこ時間が経つ。もういい加減、頂上に着いてもいい頃だ。
え、もしかして私、迷った?
陽が傾き始めている。もしかしてこのまま辿り着かなかったら野宿?と言うか、これって遭難って言ったりする?
「いやいや、ちゃんと地図は覚えたし…」
そう言ってまた踏み出した瞬間、ズボッと音がする。落ちる、と判断するより先に、体が動いていた。
「あっぶなぁ」
目線が下がった瞬間、背負っていた荷物を投げ捨てる様に背後に放った。そして肩掛け部分を両手で捕まえる。腕が荷物に引っ張られ、落ちる体と逆向きに力が加わった。
当然だが、荷物より私の方が重い。しかし穴の縁、つまり地面に摑まるくらいの時間は稼げた。
「うわ、殺すつもりかよ」
下を見ると、杭のような物が埋め込まれていた。
これはさっさと退散するべきだ。そう思って這い出ると、すでに数人の男達に包囲されていた。
「えっと、話し合いましょう…?」
そう言う私に、相手は聞く耳を持たなかった。
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