★ただの土壌調査だ。
章の先頭に付いているマーク(⭐︎)の種類によって、話が続いていると思ってください。
現在の季節は梅雨。川に沿って、紫陽花の花が続いている。
任務で異世界に来た私は、はじめに火の国に来ていた。火の国と火炎の国はもとから友好関係にあり、火の国の協力を得てからの方が他国ともやり易くなるだろうと思った為だ。しかし、
「少し考えさせて欲しい」
と、言われてしまったのだ。そして色々探ってみた所、とある重臣が渋っている事が分かった。
残念ながら何が問題なのかは分かっていない為、仕方なく私はその大臣の屋敷へと向かっている。
綺麗な青い花を眺めながら、私は溜息をついた。
「部下と連絡が取れない」
到着後、相手は早々に口火を切った。
「国境近くの任務だったのだが、向かった日の午後から連絡が取れていない」
ちなみに、それは1週間前の事だと言う。私は出された紅茶を一口飲んだ。オレンジペコの香りが鼻腔をくすぐる。
「ちなみに、なんの調査ですか?」
「ただの土壌調査だ」
そう言えば、環境大臣だったな。私は納得する。
環境問題が騒がれている昨今、国境付近の環境調査を行い、自国のクリーンさ・越境汚染の有無を公表していると聞いた事がある。
「隣国の拉致をご心配されているのですか。」
「……少なからずな」
行方不明になっているのは、国から調査を依頼された民間企業の社員5名と、国境付近と言う事で護衛として付いていた騎士2人の計7名。
火の国は比較的周辺国とは友好関係だ。だからと言って、やはり他国。いつ同盟等を反故にするかは分からない。
「国際問題になるかもしれない。この様な状態では、貴女の話には乗れない」
私の任務は、この世界の4ヵ国とアルカナ討伐同盟を結ぶ事。拉致を行った国が入っているかも知れない協力は結べない、と言う事か。
出鼻を挫かれて、私は内心溜息をついた。