*黄色いダイヤか
暗いトンネル内を、列車に備え付けられていた懐中電灯1つで進んでいく。
片手には懐中電灯、もう片方は愛剣の柄に置いていた。
「これは……」
そして線路に黄色の粉を見つけた。溢したかの様に、不自然に落ちている。少なくとも、その場に析出した様には見えなかった。
「イエティか…?」
だが、こんな物を奴等が扱うだろうか。いや、それよりも
「なんでこんな物が?」
数十年前まで、ここはダイヤモンドの産地だった。そう聞いている。これの事など聞いた事がない。
現在は輸出量が極端に減っている事から、もう枯れていると思われている。
首を傾げた瞬間、脳裏に閃いた。
「"黄色いダイヤ"か」
そう呟いた瞬間、目の端で動く物を捉えた。殆ど反射で追い掛ける。
「見失った…」
流石に距離がありすぎて、追いつけなかった。
しかし幸運にも、外から入ってくる光を見つけた。出口だ。
外から攻撃が来ないか、恐る恐る覗くと谷間に橋を架ける様に線路が続いている。ここを歩いて通るのは、なかなか怖い。しかし思ったより町まで近い様だ。
さらに、少し水の音が聞こえる。
「これは…」
そして身を乗り出して、壁沿いにとある物を見つけた。恐る恐る手を伸ばすと、グチョと音がして、触れた事に後悔した。
「これは食えんな」
もとから食べる気などないけれど。
私は汚れた手を見つめた。これの最盛期は夏の上旬だった筈。遅咲きの物もあるようだが、この完熟しきった様子を見ればおそらく間違いない。
「植物への知識は乏しいが、これで辻褄は合う筈」
改めて調べないと分からないが、おそらく合っているだろう。
そう思いつつ、私は線路に視線を戻す。
「これ、渡らなきゃいけないよな…」
ピューと風が意地悪そうに吹いたのだった。




