*私たち、運が良かったのね
「ちなみに、イエティはどこから出てきたんだ」
「突然出てきたから分からないわ」
あっけらかんと言うオリーブに、私は苛立つ。オリーブはニッコリ作り笑いを向けると、わざとらしく大声で言った。
「期待しているわよ、火炎の国の軍人さん!」
一斉に、乗客達が私を見る。
やってくれたなっ!と私は苦虫を潰したかのような表情を浮かべた。
しかも「少佐だなんて、心強いわ」とオリーブは追い討ちをかけてくる。
ーー油断した。これは自分の落ち度だ。
私は名前しか言っていない。服装も私服だ。
佐官と言う身分がバレたのは、おそらく私の座っていた席でもサイコメトリして読み取ったのだろう。
してやったり、と舌を出すオリーブを私は睨んだ。
取り敢えず、他の車両はどうなっているのか。また、同乗している筈の車掌等はどこにいるのか。
確認しなければならない事は多々ある。
私は渋々ながら「不用意に動かない事」「いつでも逃げれる様に準備しておく事」を指示し、状況確認へと向かった。
「あらあら、悲惨ね」
「……」
何故か付いてきたオリーブは、先頭車両の状態を見て言った。私は押し黙る。
端的に言うと、先頭車両は潰れていた。脱線後、壁にぶつかったのだ。殆ど即死だろう。
「私たち、運が良かったのね」
事実だとしても、そんな呑気な声で言うな。
そう思ったが、それを咎める権利を私は持つのかと言われれば、答えられない。
私たちがいた車両から先頭まで、徐々に死傷者は増えていった。一緒に乗っていた車両の乗客全員が無事だったのは、奇跡に近いだろう。
「取り敢えず、安全な場所を見つけるのが先決だ」
トンネル内のどの位置にいるのか不明だ。それにイエティが本当に襲撃してきたのなら、その対応もしなければならない。
何より、救援信号が出せていない。トンネル内で、電波が届かないのだ。
予定時刻に列車が来なければ、何かあったと分かるだろうが、それでは遅過ぎる。
なにせ到着時刻まで、まだ3時間はあった。




