解説:控えようと思う
久しぶりに時間がかかった作戦だったと、ルカは溜息をついた。
事の起こりは、紫を預かってから半月ほど経った頃
『ルカ、久しぶりに温泉に行こう!』
と言うナギからの連絡だ。
何か企んでるのか?と窺いつつも、不安半分、期待半分と言った具合で源泉の街を訪れた。
そしてナギと合流後、案の定、今回の任務を説明された。
「風神の姫君、アイとは個人的な接点を持っておきたい。出来れば、恩を売る形で!」
次の目的地、風の国の情報を集めたら、もしかしたらアイがここに来るかもしれない。だから今のうちに仕掛けておく。
と言う内容を言われ、ルカは頭を抱えた。
「…それはどれくらいの可能性なんだ?」
「50%くらい?」
当たるも八卦、当たらぬも八卦。
そう言わんばかりのナギに、ルカは珍しく苛立ちの表情を見せた。ーー半分とは言え、期待させた腹いせだ。
流石のナギもマズい、と思ったのか理由を話す。
「アイはかつて魔力暴走を起こし、自国に損害を与えている。そのせいで度々、面倒事を押し付けられているんだ」
おそらく、現在チラホラと報告が上がっている健康被害の問題も、押し付けられる筈。
そう言うナギに、ルカは"魔力暴走"と言う言葉に反応した。
「魔力暴走だと?いつの事だ?」
アイは風神の姫君と呼ばれる程、多量の魔力を保持する。それが暴走したとなれば、大事件だ。しかしそのようなニュースは入ってきていない。
ナギは「アイが10歳くらいの頃だ」と答えた。
「随分昔の事を引っ張るんだな」
「そりゃ、便利な駒は手放したくないだろ」
それもオリジナルを使えるともなれば。
その言葉に、ルカは察した。
「まさか、その時に発現したのか…?」
「おそらくな。当時、師事していた女性が亡くなっている」
押し黙るルカに、ナギはポンッと両手を合わせた。頭を切り替えろと言う意味だ。
「まぁ、具体的な事はアイが来る事が確定してからだな」
その後、ルカはアイの財布を盗んだり、ナギから受け取ったストラップを有害物質が渦巻く下水に浸けたりと、こき使われるのだった。
ちなみに、事前にフッ化水素が発生しているかもと言われたルカは
「ガスマスク程度の装備で行けと!?」
と声を上げた。珍しくナギに詰め寄り「追加報酬を要求する」と凄む。
後日、
「ルカへの無茶振りは控えようと思う」
とグッタリした様子で、ナギがレイに愚痴をこぼしたのだった。
「嘘が混ざっている」→ナギとアイの会話で能力を使っていない(傍線以外)にはフェイクが混ざっています。
また、ナギ目線で描かれている回(例えば冒頭の、『久しぶりの湯舟〜』)も嘘です。
解説回での通り、アイと会う随分前から街に来ていました。
明日も本編です。またまた新キャラ登場します。