交錯編-わざとではなく?
いや、寧ろ制御が下手なのかも…と冷静ぶって分析してみる。「うーん…どうしよう」と悩みつつ、不意に一番近くに浮いていた光の球が気になった。
淡い光を放つそれをまじまじと見つめるとーーー私は目を見開いた。
「私…?」
それは意識を失い地面に倒れている自分自身が映し出されていた。
「もしかして、現実のリアルタイム映像?」
そう推測した私は、少し離れた別の球体に目を移した。遠いからか、ぼやけて見えるーーー違う。
ハッとして、私は鉱山内部の立体地図を頭の中に作り出した。そして周囲の球体の位置と比較する。
「あぁ…そう言うことか!!」
この光は、人生を映しているのだ。おそらく一人一つ、それぞれ割り当てられている。
そして亡くなった場合、光が消えるのだ。先ほど覗こうとした遠くの映像は、ぼやけているのではなく
「さっき私が始末した奴らのものが、位置的に被さっているのか」
この光は人と連動している。状況を、位置を投影しているのだ。
私は苦々しく言った。
「私は意識を閉じ込められた訳じゃなく、ましてや別の空間に移動した訳でもない…ここは高次元の世界」
つまり
「流石、知恵の女神の眷属」
高らかな声を上げて姿を現したのは、
「真理の上に立つ存在…」
この罠を作ったのは人ではなく上位存在だと言う事だ。
マジかよ…と、私は悲痛に顔を歪めた。
相手は初めて合う上位存在だ。だが、おそらく相手の名はーーー
「君ならもう分かっているよね?」
「……」
相手の問い掛けに私は口を噤むが、恨めしそうに見る目は答えていた。
その様子だけで満足なのか、相手は「まぁ、あの状況なら簡単に特定出来るよね」とはにかむように言う。
「けど、何人かは勘違いしてるみたいだなぁ」
「…わざとではなく?」
つい問うてしまい、私は自身に悪態をつくが、相手は特に仕掛けるつもりはないのか
「俺は自分の象徴を刻んだだけさ。それを勝手に勘違いする連中が悪い」
「……」
「寧ろ俺は傷付いてるんだぜ?まるでアスクレピオスの方が有名とでも言いたげで」
「……」
それは某世界的保健的な機構のマークが、そんな感じだからじゃないですか?とつい突っ込んでしまいそうになるのを抑える。