交錯編-本質を見抜くか
賢者の石は深奥での研究であって、アルカナが絡んでいたのは初期の頃の筈だ。上手く騙して金の精製を行い、それを元手に深奥から出た。と言う事になっている。
しかし、そうキッパリと決別出来るだろうか?
「ナギ、フルメン中将、ミランダさんーーーそしてルカ。偶然にしてはアルカナと深奥の繋がりが強い」
それにルカの話だと、ナギと深奥についてゲフリーレンやヒュエトスも関わっているとの事だ。
「そして賢者の石は栄光の世界だけじゃない。発展の世界にも関わっている」
証拠はない、根拠のない。だが、自信はある。
その日向の様子に、鵠沼はそっと呟いた。
「流石、日向。本質を見抜くか」
そっと伏せた目線の先には、ミラ達の置き土産があったのだった。
呪いか疫病か。まずはどちらなのかを特定しなければならない。
本来なら検体として数名程、半強制的に検査する所なのだが、下手に光の膜ーーー結界を壊してしまいバイオハザードになってでもしたら、ひとたまりもない。
『と言う事で、風の国の上層部ではむしろ結界を強化し、中にいる村人達には尊い犠牲になって貰おう、と言う動きがあるみたいだ』
「なんとまぁ、非人道的な判断な事で」
『堅実な判断とも言えなくはないぞ?少数を切り捨て、多数を救うのは愚策ではない』
状況によってはな、と私は吐き捨てた。
「見切りを付けるのが早過ぎる。少数を切り捨てるのは、努力してもどうにもならなかった場合だ。ーーーだが」
私はニヤリと微笑う。
「捨ててくれるなら、私が有り難く拾ってやる」
そう言う私は、現在山頂にいた。
予想以上に強い風が吹いている。
「此処に来るのは、半年ぶりかな?」
微かに桃の香りがしたのは、きっと気のせいだ。
「鬼が出るか蛇が出るか」
気を付けろよ、と言うラプライアスの言葉を最後に、私は通信を切った。