交錯編-これ、誰かに干渉されてるぞ
随分と過激な事をしたものだ、とフィルマメントは思った。
連中は上位存在を恐れていないのか、と。
「もう後戻りは出来まい」
天候の村は、ある上位存在の領域だ。誰が支配しているか知っている身としては、たとえ異世界の事であろうと看過できない。
「ウンブリーめ…良い様に使われおって」
ため息に近い悪態を吐くと、フィルマメントはとある人物に連絡をした。
相手は2コールで電話に出る。相手の声が聞こえた瞬間、フィルマメントは言ったのだった。
「お前、今どこにいる?」
アイ達の安否が不明。その言葉に、俺は「天候の村の現状は?」と尋ねた。
日向は首をふりながら
「確認出来ていない。有害物質の検出調査が終わらない以上、迂闊に近付けないから、だと」
「調査はどれくらいで完了するって?」
「問題が起きているらしくてな、目処が立っていないそうだ」
そう答えながらも、日向自身、腑に落ちない表情を浮かべて呟いた。
「これ、誰かに干渉されてるぞーーーどんな問題が起きているのか、幹部に報告が上がってこない」
「!!」
俺と風見は瞬時に顔色を変えた。
そう、忘れがちだが日向もアルカナ幹部の一人なのだ。
風見は腕を組んで思案する。
「あんたとしては、どこで情報が止まっていると思うのかしら?」
「…普通に考えれば、鵠沼総帥が口止めしているんだろうな」
鵠沼以外の幹部は同列だ。つまり上長からの口止めは、鵠沼総帥以外あり得ないのである。
ただし、報告者が個人的に弱味を握られている場合は別だが。
「鵠沼総帥の意図を考えるなら“関わらずに戻ってこい”って事だろう」
「おそらくね」
風見は同意し、そして二人は俺の方を見遣った。
二人の視線を感じながら、俺は思案し
「…完全に行き来ができなくなる前に、向こうに戻るべきだ」
苦渋の思いで、俺はそう言った。
「うーん…これは非常にまずいなぁ」
と、私は天候の村の入り口で腕を組みながら困っていた。昨夜、というか今朝、連絡がきてからすぐに駆けつけたのだが、これは一体どうしたものか…。
「此処には理の人がいるって“知らなかった”訳では、やっぱりなさそうだなぁ」
じゃなきゃ、こんな事にはなっていない。と言うか、じゃなきゃ既に返り討ちに遭い、何事もなかったかのように村人は平穏な日常を過ごしていた筈である。