交錯編-意地が悪いにも程がある
フルメンは頭を抱えていた。
ナギが水の国に行った…ことは別に構わない。問題は先程上げられた、とある報告である。
「もしや、これをどうにかする為に…?」
だが、もしそうだとすれば時間との勝負になる。
「ウンブリエル…事はそう上手く進まないようだぞ」
そう呟くと、フルメンは電話を取り出しーー一少しだけ躊躇してーーー電話をかけた。
2コール目出てた相手は
「鵠沼、お前知っていたな?」
流石は霰だと、鵠沼は思った。
「なぜこんな場所に建てたのか…これがその理由か」
そう呟く場所は、霰が退職後に建てた例のカラクリ屋敷だ。
ナギ達が赴いた後、一度全体調査を行ったが、その時には気付かなかったある物。
「全く…意地が悪いにも程がある」
霰の事だ。ナギと深奥そして大地の国との繋がりを予見していた筈だ。
じゃなければ、こんな物を作っておく筈がない。
「おそらくミラとの合作だろうな」
霰は魔道具師であり、こちら方面は門外漢だった筈。逆にミランダはこちら方面に精通していた。
「さてナギ…お前は気付くか?」
何故ウンブリエルが賢者の石を欲しがるのか。
「欲には様々な種類がある。自身の為だけでなく、時には他者の為に大欲を抱く事もある」
鵠沼は物悲しい表情を浮かべた。
「この世界に、悪役はいない」
そうだろう?フィルマメント。
美しいな、と私は感嘆した。
「とある温泉街でみた風鈴とかも綺麗だったけど、これもまた壮快と言うのか…」
球体の中で光を受けながらクルクル回るそれに、私は目を奪われる。
色とりどりのそれらの構造は全て同じで、私も自室に一つ欲しいと思ってしまう。
まぁ、今は飾る部屋なんてないんだけど。
「前は別の物を集めてなかった?」
と、後ろにいる持ち主、いや家主に問いかけた。