交錯編-こーゆー系は専門外なんだよ…
あぁ、しくじった…。
囲まれた檻の中で、私は臍を噛んだ。
「こーゆー系は専門外なんだよ…」
鳥籠のような檻の中、外は暗闇に覆われていた。
そしてーーー淡い光を放つ幾つもの球体が浮かんでいる。
こんな現実離れした場所を、私は知らない。つまり
「幻覚や催眠の解除は苦手なんだよな…」
罠に掛かり、敵の術中に現在嵌っているのである。意識がない肉体に何か仕掛けられる可能性があり、さっさと解かないといけないのだが、その手立てが見つからない。
「あぁ、くそっ!!せめて機能していてくれよっ!」
そう私は切に願ったのだった。
「ナギはあれから戻ってきていない」
「……」
村長の言葉に俺は悪態を吐く。
「戻って来ずとも、あんたと何らかの連絡は取っているはずだ」
なにより、賢者の石を作ろうとしている村長達にとってナギの行方が分からないと言うのは、無視出来ない問題の筈だ。必ず、ナギを繋ぎ止める何かがある筈。
そう凄む俺に、村長は溜息を吐いた。
「お前は、本当に…」
独り言のように呟く言葉に俺は眉を顰めた。しかし村長は言葉を続けず、首を横に振ると
「ナギの行方が分かり次第、連絡しよう。ーーーただし」
村長は一度言葉を切ると、真剣な眼差しを俺に向けて
「そんな余裕があるとは思えないがな」
その翌日、土の国が風の国に向けて宣戦布告した。
まだ暑さが残る季節。私はコーヒーフロートを堪能しながら、配信されたばかりのニュースを読んでいた。
「何故このタイミング…?」
神奥に強襲をかけてきたのが7日前の事。ウンブリエル達がもうそろそろ次の動きをするだろうと思っていたが、この展開は予想していなかった。
「何が狙いだ…?」
風神の姫君や理の人の協力を懸念してだろうか?
だが…戦争を仕掛けるまであの二人を警戒するのはおかしい。なにより土の国にとって何のメリットがあって宣戦布告したのか?
「前に一度、戦争を吹っ掛けたがすぐに取り消したしなぁ」
あれからまだ一年も経っていない。私はバニラアイスを一口掬いつつ「うーん…」と唸った。
「それにあの時は、アルカナが土の国を嗾けたからであって、今は関係ないしなぁ」