小噺
珍しく、過去verの小噺。
風見は脱衣所の鏡で、自分の顔をジーッと見つめていた。そして気付かれぬ様にチラリと横目で隣に座る赤髪の女を盗み見る。
「元は同じでも、歳を取るごとに自己投資分の差が出るねぇ」
「…嫌味かしら?」
乾燥気味の肌に最近悩みな風見は、顳顬をピクピクさせながら言った。
ナギは「か、風見なんて、こ、怖くなんてないんだからっ!」と言いつつ、少し距離を取る。
コットンパックをしながらドライヤーで髪を乾かすナギに、風見は少しばかり恨めしそうに見た。
何だかんだ、ナギの方が女子力は高いのだ。
口調と大食い、そして飄々とした性格がそれを感じさせないだけで。
溜息混じりな息を吐いた風見に、ナギは手を動かしながら言った。
「まぁ、まずはインナーケアから始めたら?」
「…あんたが言っても説得力ないわよ」
そう風見が言い返す理由は、本日のナギの晩御飯が親子丼にヒレカツ、汁物にカレースープをチョイスしていたからである。ちなみに昼間は、食堂でチキン南蛮定食を食した後、執務室で「食後のデザート」と称しコンビニデザートを堪能をする姿が確認されていた。
何故あんな暴食を繰り返しているにも関わらず、体型をキープ出来ているのか。アルカナ最大の謎とされている、とかいないとか。
ナギはドライヤーを止めると、定位置に戻した。
「これでも健康意識は高いんだぞ?最近はチアシードを取り入れているし!」
「チアシード…あのブツブツのやつね」
そう言えば、最近スムージみたいな物を飲んでいた事を思い出す。
ナギは得意げに言った。
「チアシードには、血栓予防や中性脂肪値を低下させる働きがあるα−リノレン酸がサーモンの8倍とか、必須アミノ酸が入っているとか、水分を与えると10倍以上膨らむとか!良い事づくしなんだ」
ちなみに黒より白がオススメ、と付け加えるナギ。
「私はココナッツミルクに入れて飲んでるよ!」
「そう…」
嬉々として知識をひけらかすナギに、私は一言。
「それで…食べる量は減ったのかしら?」
その一言で、ナギは口を閉じたのだった。
「ナギの体型維持」以外にもアルカナ最大の謎は幾つかあります笑
ちなみに、「ナギの妹属性の謎」はシルフィードとの関係が明らかになった事で、解明されたと言う事になります。
次回から本編に戻ります。