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交錯編-卑怯者っ!!

 地面はなく、暗い空間ーーーまるで宇宙にいるようだが、周囲には星ではなく淡い光を発する球体がいくつも漂う様に浮いている。

その空間で、アテナは一つの球体を覗いていた。

ルカがナギに詰め寄っている様子が映っている。


「さて、この後どうするのかしら?あの子の望む通りになるかしらね」


ついにルカがサルトゥスの死の真相を知ったのだ。愛が憎しみに転じる事は多々ある。


「さぁ、貴方の決断が、今後どうなるか決まるわよ…?」


アテナが見ている事にも気付かずに、二人のやり取りは続く。

真実を話すナギに、絶望するルカ。自分に詰め寄るルカを、ナギは隙を見て大外刈りをして逃げ出した。その後ろ姿を急いで追い掛けるルカ。しかし外に出ると見失ってしまう。

臍を噛むと言うより、まだ納得していない様子のルカに、アテナは微笑んだ。


「どうやら、貴方の思い通りになりそうよ」





 ナギの話に絶句する。村長ーーフィルマメントから指摘された時から覚悟はしていたが、確定してしまった事実に俺は顔面蒼白になった。

喉がカラカラで、口の中が乾燥しているのを感じながら、それでも思考を巡らし俺は問う。


「なら何故…俺を置いて行った?」


「っ!!」


僅かだが、ナギの表情が歪む。俺は縋り付く様に一歩近付いた。


「復讐する為に俺に近付いたのなら、何故復讐する前に俺から逃げたんだ?」


「……」


ナギが無言になる。恨めしそうに俺を見上げる様子は、痛い所を突かれたと言わんばかりだ。

俺の内心は複雑だ。

父を殺された事への怒りは勿論ある。だがそれより強い感情は、


「今も俺の事、好きじゃないのか?」


ナギに愛されていたい、と言う気持ちだった。

俺の言葉にナギは目を見開き、グッと一度唇を噛み締めた。そして意を決した面持ちで言う。


「今も昔も、愛してないよ」


ナギの言葉が胸に突き刺さる。


「〜〜っ!」


悲しみと怒りに近い感情が湧き、叫びたいのに何を叫びたいのか分からなくて、無意識のうちにナギの肩を掴もうとしてーーー油断した。

ナギの得意技、大外刈りである。

背中に衝撃を受け、俺は呻き声を上げた。その間にナギが走り出す。


「ナギっ!!」


急いで起き上がり、ナギを追う。

みるみる離される距離に、俺はようやく感情の正体に気付き、叫んだ。


「卑怯者っ!!」


そしてナギを完全に見失ったのだった。

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