交錯編-だから答えて欲しい
私は準備を整えると一度深呼吸をして部屋の扉を開けた。そして
「おはよう」
「…もう夜だけどな」
部屋の前で待ち構えていたのは、ルカだった。
ヒナタがいなくなって暫くすると、誰かが部屋の前にやってきた。ソルか?村長か?と眉を顰めたが入ってくる様子がなく、私は訝しんだ。そしてハッとしーーーどうすればいいかとウダウダしていたのだが、先程ようやく覚悟を決めて部屋から出てきたのだった。
普段通りのやり取りだが、ルカの顔が見れない。目を逸らす私に、ルカはゆっくりと近付いてそっと優しく頬に触れた。ルカの手に、一瞬だけ身体をビクつかせる。
その様子に私はハッとして急いで顔を上げた。
ルカは物悲しげな表情を浮かべていた。
「ルカ、ごめ…」
「俺はお前の事、好きだよ」
ルカの急な言葉に、全く予想していなかった私は目を見開く。そして私が何か言う前に
「だから答えて欲しい」
ルカが先に問うた。一瞬だけ躊躇してーーーそして
「復讐する為に、俺を好きなフリをしたのか?」
その問いに、私はどう答えればいいのか分からなかった。
決死の覚悟で聞いた問いに、ナギは一瞬だけ目を見開きーーー次の瞬間、可笑しそうに笑った。
「バレたかぁ。まぁ、いつかはバレると思っていたけど、このタイミングでかぁ」
ナギの言葉に、胸の辺りがぎゅっと痛くなる。
「けど、もう終盤だしな。そろそろ暴露しようと思ってたんだよ」
締め付けが酷くなる。
「村長からなんて聞いた?サルトゥスの事は?実はあの土砂崩れ、私が仕込んだんだー笑」
「ナギッ!!」
ナギの開き直ったような話を遮る。俺の声に、ナギは上げていた口角を下げると真顔で静かにーーー宣った。
「そうだよ。私は復讐する為に、ルカに近付いたんだ」
「……っ」
予想していた筈なのに、俺の心は抉られる。悲痛に顔を歪ませる俺に、ナギは追い討ちをかけるように続けた。
「アルカナに誘ったのも、傍に置いたのも、理由があってに決まっているだろう?」
先程とは打って変わった様子で、ナギは淡々と言葉を紡いだ。
「サルトゥスが亡くなったあの土砂崩れは、私が故意に起こした物だ」