交錯編-うっさい!!
俺に次いで乗り込んだ風見は、村長ではなくナギがいる事に驚きの声を上げた。
「なんでいるのよ!?よりにもよって、あんたが!」
その言葉にナギは「あぁ、お前達も知っているのか」と弱々しく呟いた。
その様子から、ナギも自分が賢者の石にされつつある事を知ったのだと、理解する。
が、それ以上に具合が悪そうな気がして、俺はナギに近寄ろうとしたーーーが、
「よく看破ったな」
先程のリーダー格とは別の男が、俺とナギの間に立つ。その顔に見覚えがあり、俺は僅かに目を見開いた。
「ウンブリーおじさん…?」
「!!」
その場にいた殆どの者が驚愕する。ウンブリーおじさんはわざとらしい笑みを浮かべ、猫撫で声に近い、親しげな声色で俺に言った。
「久しぶりだな。サルトゥスがまだ生きていた頃にあったのが最後だから、10年ぶりか」
「此処にいるって事は、大地の国の関係者だったのか…」
俺は驚きつつも、視界に入るナギに注力した。意識していることがバレないように。
ナギを連れ出す機会を窺う。
しかし
「お前とアリエルの関係は知っているぞ」
「!!」
ウンブリーおじさんの表情が、作り笑いから不気味な笑みに変わった瞬間、動いた。
風見が。
風刃がウンブリーおじさんの背後から強襲をかけ、それに反応した隙に風見自身が正面から攻撃しようとした。拳の代わりに突き出された鞘が真っ直ぐとウンブリーおじさんの腹部へと向かうが、風刃は現れた砂壁で威力が落ち、風見の鞘は片手で受け止めたれた。
「なんだ、思っていた以上に弱いな」
「うっさい!!」
風見は鞘を引こうとしたが、掴まれている為にびくりともせずーーー手を放して、後ろに引こうとした勢いを利用して、片足を蹴り上げた。
後方回転と宙返りの中間みたいな回し蹴りに、ナギは「よくその体勢から出来るなと感心した」と後に語る。
風見の蹴りが頬を掠め、ウンブリーの肝を冷やした一瞬。
次は俺が動いた。
「フェアリーリング」
ナギの背後に魔法を展開し、ダッシュしてナギに抱き付くと、そのままの勢いで輪を通り抜ける。
「風見っ!!」
俺の背後に叫ぶナギ。チラッと後ろを見やると、風見はウンブリーおじさんの急所に蹴りを喰らわせ、すぐにやって来た。
「うわ、何でそいつがいるんだよ?」
そして繋げた先には、安全確保の為に待機していた日向がおり、戻ってきた俺たちへの一言に、俺は苦笑いした。
ーーーよかった、これで…
と安堵したのも束の間、
「ル、カ…」
「ナギ!?」