交錯編-不本意?
「小噺…?」の解説です。
目的地へ向かう道中、日向は疑問を口にした。
「なぁ、何故あの蜘蛛達がアテナ様の使いだって分かったんだ?」
「そうよ!アテナ様の眷属と言えば、梟じゃないの?」
二人の問いに俺は「使いと言うより…」と言い淀む。
「おそらく不本意だったと思う」
「不本意?」「誰が?」
同時に首を傾げる二人に、俺は頷いた。
「蜘蛛を操っていた者が。アテナ様によるナギへの嫌がらせに、一度あの蜘蛛を見た事があったんだが…アテナ様の眷属と言うのか…アテナ様によって蜘蛛に変えられた存在がいるのを知っているか?」
「蜘蛛に変えられた存在?」
「もう少し詳しく言うと、女性型のモンスター」
「女郎蜘蛛…?」
「アラクネか!!」
風見は首を傾げつつ、日向はピンッと閃いたのか叫ぶ様に言う。俺は「日向が正解」と以前、ナギから聞いた話を掻い摘んで説明し始めた。
「アラクネは元は機織りの名手だったが、不遜な態度がアテナ様の怒りを買って、蜘蛛の姿に変えられたんだよ」
アテナとの勝負とか色々な経緯があっての事だが、今は時間がないので端折る。取り敢えず
「子々孫々までぶら下がって巣を張りなさい」
と言う皮肉を込めた罰らしい。
ナギへのちょっとした嫌がらせとして、執務室に現れた事からも窺えるように、アラクネは今もアテナ様の支配下にいるのだろう。
と、蜘蛛に怯えながら俺に泣きつくナギが当時言っていた。
そして俺はとある推測を口にする。
「おそらく…わざわざ蜘蛛を使ってきたのは、梟だと自分が関与したとバレるのを危惧したからだ」
「バレる?ーーーあぁ、なるほど」
俺の言葉に、流石アルカナ幹部の一人。日向はすぐに理解した。
「例の“杖と蛇を象徴とする上位存在”に、か」
日向の言葉に俺は頷く。
おそらく深奥はアテナと別の神との境界なのだ。
そして現在、侵略行為を受けているのである。
そして指示された場所に乗り込んでみれば、会いたくて、でも今はこの場にいて欲しくなかった人物がいてーーー俺は悪態をついたのだった。