交錯編-この間の報復か?
ルカ達が村長から賢者の石について聞いている時の、ナギ達です。
ここから時系列がころころ変わります。
ご了承下さい。
ソルを呼び出した直後、私は背後からの気配を察知して、振り向き様に回し蹴りを食らわせた。そして
「おい!助けろ!!」
敵の身元を探ろうとした瞬間に景色が変わり、ソルによって入れ替わった事が分かる。声がした方を見ると、ソルが暴漢に遭っていた。
「こいつ、大地の国のやつだ…」
「この間の報復か?」
意識を失った相手の装備を漁る私に「ならお前のせいだよなぁ?」と恨めしそうに見てくるソル。
裏拳を叩き込むのを自制した私はハッとした。
「村長の身が危ない…?」
疑問系なのは「殺されるのは困るけど、少しくらい痛めつけられればいいのに」なんて思ったり思わなかったりしたからだ。
私の呟きにソルが焦る。
「マジかよ…!?それなら早くーー!」
「待て、ルカ達と面会中なんだろう?なら殺されはしない…筈だ」
さすがにルカ達も、目の前で情報源が殺されそうになれば助ける筈だ。多分。おそらく。
なら、猶予があるうちに手は打っておくべきだろう。
スマホを取り出すと、私はとある人物に連絡した。
「ちょっと手伝ってくれない?ーーヒナタ」
嫌そうな声が電話口から聞こえたのだった。
洞窟を出た俺達の目の前に、ナギなら卒倒しそうな光景が現れた。
「うわぁ…これも見張りか?」
と、顔を顰める日向に
「こんなの簡単に始末出来るわよ」
と風見が魔法を使おうとしたが、違和感を覚えた俺が急いで止める。
「やめろ」
俺の制止に訝しげむ二人。だが俺は目の前にいる大量の蜘蛛が、見張りでもなければ罠でもない気がしたのである。
何故ならこの蜘蛛の種類に見覚えがあったからだ。記憶を呼び起こし該当する情報から、とある存在が浮かび上がる。
「アテナ様の使いか…?」
俺の呟きに蜘蛛達はゆっくりと動く。そして
「これは…?」
数匹の蜘蛛が背中に一枚の布を載せてやって来る。恐る恐る手に取ると、それは紙の地図と見紛うほど薄く鮮明に織られた布だった。布の上に地図が描かれている訳ではない。織られているのだ。
風見達が俺の後ろからそれを覗き込む。
「これって、おそらくあの建物の中とその周辺の事よね?」
「おそらくな。ここに見覚えのあるマークがある」
そういって日向が示したのは、例の扉に彫られていたマークだ。
「あと…このAって何かしら?」
と、建物とは別の位置に描かれたアルファベットを風見は示した。流石に分からず、俺と日向は首を横にふる。
「arucanaの略とか?あの建物って元はアルカナの物よね?ならこの土地も、って事を示す為に書いたとか」
「ここで活動していた頃はアルカナではなくタロットだ」
「ならーーーAsklepiosの略かもしれない」
それが一番有力な説であり、つまり敵の領地だと言う事だが、今はそんなことよりもやるべき事がある。
これがあの建物の内部図だと言うのならーーー
「此処に行けって事か」
一箇所、目立つ様に赤い点が打たれていた。
俺は地図を仕舞うと、蜘蛛達は役目を終えたと言わんばかりに早々に後退して道を開けたのだった。