交錯編-よく気が付いたな
埒があかない、と判断したのか風見は別の事を指摘した。
「ミラさんも復讐対象って言ったけど、どう言う事よ?あの人はナギがアルカナに来てから、知り合った人の筈よ」
風見の指摘に日向も頷く。もっともな意見に、俺はどう説明しようかと悩んだ。
俺も確証があった訳ではない。ゲフリーレンが零したあの言葉から想像しただけだ。
俺は意を決して、そして確認も兼ねて村長に向かって言った。
「ミラさんが、身代わりの計画を立てたんだろう?」
「!!」
俺の言葉に、二人は目を見開く。次いで村長に目を向ければ、村長は無表情でーーークスリと嗤った。
「よく気が付いたな」
そして
「ミランダは私が追放した子供だ」
因習の鎖はどこまで続くのか。
以前、ゲフリーレンは俺に『助言者』『協力者』の存在を仄めかした。
そしてナギがミランダに復讐したと言う事実から、おそらく助言者か協力者かがミランダなのだろうと推測したのである。
村長の言葉に二人は驚愕し、察していた俺はギリリッと歯を食いしばって村長を睨んだ。
「血の繋がりは?」
「ない。ミランダも捨て子だ」
「……」
なんとも言えない気持ちになり、俺は二人をチラッと見た。与えられた情報が衝撃的過ぎたのか、キャパシティオーバーを起こしている。
ようやく口を開いたのは、風見だった。
「つまり、ミラさんはルカの母親と一緒に育てられ、因習に則って追放された。その後、ネージェが双子を産んだ事を知り、双子の片割れを助ける為にナギを身代わりにする事を提案、実行したって事?」
流石、風見。事の流れをよくこの短時間で把握出来たな…。
俺は「あぁ、そうだ」と頷き、村長に視線を向けた。
「風の檻でナギを実際に拾ってきたのは、ミランダだろう?」
俺の言葉に村長はフッと笑った。
「身代わり計画は私が立てたものではないから、確かではないが、おそらくな。アルカナと関わりを持っていないネージェ達が、放置されたばかりのあいつを偶然見つけて拾うなど、あまりに都合が良過ぎる」
村長の言葉に、日向は項垂れた。
「アルカナと深奥を繋げたのが、ミラさんと言う事か」
当時、アルカナ派が風の檻に実験体を放っていた事を知ったミラは、それを利用したのだ。
そして巡り巡って、師弟関係になるとは誰が予想出来ただろうか?
助言者、協力者の事は「交錯編-これは貰っても?」に出ています。