交錯編-よう、久しぶりだな
今回の話はめちゃくちゃ長くなる予定です。
お付き合いいただけると幸いですm(_ _)m
「ふざけんじゃねー!!」
と、ヒナタは叫んだ。
事の発端はしばらく前に遡る。
風見を救出してから数日後、俺たちは深奥の探索へと乗り出した。
「と言うか、もうここでしょ?」
と言う風見の面前には、入口と思われる門があった。板で囲まれており、外からは様子が分からない。
「他に村は見当たらないしな。あの強風を越えられる者が少ないから、中は疎かなんだろう」
と、日向。左右からチラリと視線を向けられ、三人の真ん中にいた俺は、一度咳払いをする。
「この村の連中からしたら、俺らは侵入者に近い。気を引き締めていくぞ」
そして一歩踏み込んだ瞬間ーーーそいつは現れた。
「よう、久しぶりだな」
「!!」
突如現れたそいつは俺の姿にそっくりで、すぐに誰だか分かった。
俺の目つきが険しくなる。
「お前が、俺の兄貴か」
「ソレイルだ。よろしくなーーールーカス」
わざとらしく俺の名前を最後に付けるソル。得意げに笑うそいつの顔面を、殴りつけたくなるのを我慢する。
険悪な空気に、風見は仕方なく間に入ったのだった。
「それで?ナギはいるのかしら?」
「ナギ…?あぁ、あいつの事か」
まるで俺たちよりも付き合いが長いと言わんばかりの言い方に、俺と風見はカチンとくる。
風見はボソリと「実際に一緒にいた年数は私の方が長いわよ」と呟いて自分を抑えた。
…それって、俺に向けても言ってるよな?
と、苦く思うが今はそんな事は置いておこう。
俺は一歩前に出て、ソルに凄んだ。
「いるのか?いないのか?」
「今はいないぜ。あいつ、しょっちゅう外に行ってるしな。今は火炎の国にいるんじゃないか?」
「!!」
火炎の国だと?一体何故?フルメンや鵠沼総帥は知っているのか…?
いくつもの疑問が湧く。戸惑う俺に、ソルは目を細めて提案した。
「村長に会うか?」
「はぁ?」
突然の言葉に俺だけでなく風見と日向も聞き返す。
「あいつは今、村長に出された課題で動いている。疾風の娯楽大会しかり、この前の襲撃しかり、お前達と極力会いたくないみたいだしな」
そこでソルは一度言葉を切り、ずいっと俺に顔を近づけた。一瞬身構える俺に意地の悪い笑みを浮かべる。そして
「そんな奴に無理矢理会ったって、何も教えて貰えないと思うぞ?それなら、お前の祖父でもある村長に聞いた方が早いんじゃないか?」
せっかく来たんだしなぁ?と挑発的に言うソルに、俺は逡巡した。
ーーー確かに、ナギが話すとは思えない。
ナギをどんなに糾弾しようと、情に訴えるようと、あいつは黙秘を貫くだろう。煙に巻く筈だ。…ハニートラップとか使って。
実際に屈してるしな…と自己嫌悪に陥る。しかし後ろから小突かれた。
振り返ると、風見が睨んでいた。何を躊躇してるのよ?と言いたげだ。
「会わせてくれるって言うのなら、会えばいいじゃない?今は村長がナギの上司に当たるんでしょ?」
願ってもない事じゃない、と付け加える。流石、強気な風見。
風見の言い分は分かる。分かるが…フルメンやゲフリーレンの話から、危険な人物と言う印象があるのだ。
殊に俺は、本来村長にとって殺すべき存在なのである。
微妙な表情を浮かべる俺に、日向は背中を押すように言った。
「怪しかろうが、ここにいるのはお前だけじゃない。俺や全能者がいるんだ。どうとでもなる」
「……」
そう言われて、俺は各自の持ち物を思い出す。
そう、ここには準備万端で臨んだのだ。何も恐れる事はない。
俺は意思を固めると、ソルに目を向けた。ソルは「どうする?」と目で問いかける。
「…村長に会わせてくれ」
この決断が凶と気付いたのは、暫くたっての事だった。