小噺…?
2日ほど早い内容です。
作務衣姿で、俺は縁側で夜空を眺めていた。
「晴れて良かった」
と言って、俺の隣に座るのはナギ。俺は星空からナギへと視線を移した。ただしくは、滅多に見られない白い頸に釘付けになったのだが。
熱帯夜と言うほど暑くはないが、少し蒸し暑い。ナギは団扇を煽いだ。
その目は星空を映す。
「綺麗に天の川が見えてるな」
「あぁ、夏の大三角形もな」
あまり星座に詳しくはないが、有名なのは流石に分かる。
「白鳥座のデネブ、こと座のベガ、わし座のアルタイル…」
「ちなみに、どれとどれが七夕の星か知ってる?」
ナギが揶揄う様に聞いてきた。俺は「馬鹿にするなよ」と軽く小突く。
「織姫がベガ、彦星がアルタイルだろ。それぐらい知ってる」
流石に知ってるかぁ、と少し残念そうな表情を浮かべたナギは「なら、」と追撃してきた。
「七と夕で、たなばたと読む由来は?」
「……」
知らない。俺が口を噤むのを見ると、ナギは勝った!とニコッと笑った。
「元々は七夕と読むんだが、神事の棚機と乞巧奠が結び付いた物だと考えられている」
「棚機?乞巧奠?」
なんだそれ?と首を傾げる俺。ナギは更に説明する。
「棚機は秋の豊作や人々の穢れを祓う禊ぎ行事の一つで、選ばれた乙女が着物を織って棚に供えて、神を迎えるものだ。乞巧奠は、神々の衣を作る程上手かった織姫を指す織女星にあやかり、機織りや裁縫が上達するように祈る行事のこと」
なるほど、と俺は理解する。
「似た行事だから混ざった訳か」
「似た、と言うより同時期の行事だったからじゃない?」
パタパタとナギは団扇を煽ぐ。そしてふっと何か思い出したのか、少し声を潜めてーーー
「ちなみに、織姫と同じ機織りの名手の話があるが…」
「なんか嫌な予感がするから、その話はいい。遠慮しとく」
俺の言葉に、ナギはチェッと拗ねた表情を浮かべた。
その翌日、
「アテナ様!!酷いです!!私が苦手なの知ってる癖に!!ルカぁ…助けて!!」
ナギの執務室に、黒い笑みを浮かべたアテナと共に8本足の生物が現れ、ナギは俺に泣きついて来たのだった。