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交錯編-これは独り言だが

昨日鵠沼から貰ったルカの報告書に書いてあるように、深奥では発展の世界が転移してくる前から金の精製が行われていた。それがタロットによって電気精錬が伝わり、金が枯渇するまで稼働していたのである。


「そしてある程度の資金を手に入れたタロットはーーーアルカナは深奥から火炎の国へと移った」


見切りを付けた、と言った方が適切かもしれない。

資源の枯渇は時間の問題だ。それなら金があるうちに、新規事業など別の稼ぎ先を開拓するのが上策。


「と、言う事もあるが…一番の理由は“逃げ”だな」


私はルカの報告書から、次にテーブルに置いてある別の資料に目を向けた。

思い出されるのは、昨日の鵠沼とのやり取りだ。




 時間は一日前に戻る。

「疲れた!!」と言って総帥室に入ってきた私は、どかっと乱暴にソファに座った。珍しく鵠沼が紅茶を出す。

出された紅茶で喉を潤す私に、鵠沼は尋ねたのだった。


「それで…尻尾は掴めなかったのか?」


私は項垂れつつ「あぁ」と返事をした。


「大地の国は知らぬ存ぜぬと決め込んでいるし、逆にアルカナの不始末だって言ってくるし」


まぁ、実際にそうなんだけど!と嘆く私。恨めしく鵠沼に目を向けた。


「タロットがしっかりあの工場を閉鎖していなかったのが原因なんだぞ!」


「隠した先代達に言え」


「嘘だっ!知ってただろう!」


その証拠は?と言いたげに見てくる鵠沼に、私は「けっ」と吐き捨てた。その様子に鵠沼は「ふむ…」と少し考え、呟く。


「これは独り言だが…」


「?」


訝しげに眉を顰める私を尻目に、鵠沼は言葉を続ける。


「あの施設はタロットが建てたと言うより、あの地に住んでいた先住民達が行っていた研究を手助けする為に造ったらしい」


「先住民って…深奥の連中の事か?」


質問は受け付けない、と言わんばかりに鵠沼は言葉を続けた。


「アルカナ…発展の者たちが初めてこの世界に降り立った場所が、深奥。そこでどんな研究をしていたのか…」


チラッと意味深な眼を鵠沼は私に向けた。しかし私は意図が分からない。

そんな私に少し溜息を吐くと、鵠沼は仕方なしにヒントを出した。


「お前が見つけた物質がかつて何て呼ばれていたか…お前は知っている筈だ」


「!!」


鵠沼のその言葉に、私は目を見開いた。紅茶(レモンバーム)の香りが「気付いた?」と言わんばかりに漂っている。

忌々しいと言わんばかりに私は紅茶を睨みつけ、ある言葉を口にしたのだった。


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