交錯編-此処での事は、見逃したりしない
「何処に逃げたのかと思ったら…大地の国にいたんだな。そのまま大人しくしていればいいものを」
「黙れっ!亡霊がっ!!調子に乗るなっ!!」
吠える事しか出来ないアレンに、私は嘲笑を向け、ゆっくりと近寄った。その表情にアレンはゾクリッと危機感を覚える。
しかし時既に遅し。
「パンタシアでの行いはこの際、不問にしてやるよ。お前程度の小物を相手していたら、キリがないからな」
ただし、
「此処での事は、見逃したりしない」
私は一度言葉を切ると、真顔に戻り目を細めた。アレンの目の前に来ると、見下ろして
「お前も同じ目に遭うといい」
私はそう言うと、エリアLーー研究棟でくすねてきた、ある物を取り出した。ガラス瓶に入ったソレに、アレンは目を見開く。
入っているのは、赤い粉。
怯えた表情を浮かべるアレンに、私はニッコリと作り笑顔を向けると
「はい、あーん」
「やめろっ!ぐ…っ!ごほっ、ウヴッ」
少し零しながらも、半分近く無理矢理飲ませた。「水もいる?」と一緒に持ってきた洗浄瓶の純水で、喉に張り付いた分も流し込む。
「〜〜くそがっ!!」
飲み終えたアレンは、血走った眼差しで私を睨み付ける。しかし痛くも痒くもない。
寧ろ優越感を覚え、私はニンマリと意地の悪い笑みを浮かべた。
「安心しろ、一度の量じゃ問題ないから」
けど、と一度言葉を切って、私は目を細めた。
「此処で精製した金の輸出先、その他諸々を言わないとーーー分かってるな?」
更に小瓶を取り出す私に、アレンは悪態より絶望に近い表情を浮かべた。
その変わり様が面白くて私は声を上げて笑う。
「ちなみに、黒もあるから」
と、黒い粉の入った小瓶を3つ振ったのだった。
その後、アルカナから増援が来て無事に制圧が完了した。しかしナギは逃げ果せたのか、モニターで見つけた以降は足取りが掴めず、最後に姿を確認した部屋に行くと、俺たちは若干の後悔をした。
「うわぁ…臭っ!」
「取り敢えず閉めておくか」
「そうだな…ナギもいない事だし」
部屋には風見にボコボコにされた男が、下半身から悪臭をさせて座っていた。俺たちは申し訳なく思い、そっと扉を閉めると
「…帰るか」
と言う日向の提案に賛同し、本部へと戻ったのだった。
次回から解説です。
一体、ナギは何をアレンに飲ませたのでしょう?
今回、短かったので水曜日19時に更新します。