交錯編-馬鹿にすんな!
三人からのメッセージに、私は頭を抱えた。
「逃げろよ!帰れよ!ーーなんで…」
調子に乗って、ルカに存在を教えてしまったのが不味かった。いや、その前に風見にバレてるから意味ないのか?
「てか、まずいぞ!このままだと、アイツらが来てしまう」
おそらく三人とも気付いている筈だ。この建物がーーー工場がアルカナが建てた物だと。
「正しくは、アルカナの前身タロットの時代に使われてた工場の一つなんだが…。日向や風見だけじゃなくルカも気付いてるだろうなぁ」
菴羅支部を例に、三人とも事業所やら工場建設に携わった経験がある。なにより、
「実は所々にロゴが描いてあるんだよなぁ」
ほぼ300年以上前の建物の筈なのだが、それがタロットカードのロゴだと判断出来るくらいには残っている。
そして安全性や運営の都合上、アルカナの所有する支部や工場の事務棟は基本同じ構造だ。
そのお陰で、私も迷わずに管理室に直行出来たのだが。
「ここにいた連中も相手しなきゃいけないって言うのにっ!」
と、悪態を吐くが、内心で喜んでいる自分に、気付かないフリをしたのだった。
元々ここにいた連中は戦闘職ではないのか、三人体制で進む俺達は敵なしだった。
「…流石にもう逃げたようね」
バンっと勢いよく管理室の扉を開けた風見。部屋には気を失い、縛られた奴らがいるだけだった。しかし
「モニターの破壊はしなかったのか」
と、日向がモニターを眺めながら言った。そして俺は見つける。
「…いたっ!!」
叫ぶように声を上げ、とあるモニターを指し示す。二人はまじまじとモニターを覗き込み「おぉ!」とわざとらしく賞賛の声を上げた。
「目敏いな」「流石、ナギ発見機」
「馬鹿にすんな!」
揶揄う二人を睨むと、俺は改めてモニターに視線を移した。
場所は『エリアL』。映っているナギはーーー
「一体、何をする気だ…?」
白衣にマスク、そして保護メガネまでして、何やら良からぬ作業をするナギに、俺は首を傾げた。
もうそろそろ私の姿を捉えている頃か。
私は走って目的の場所を目指していた。邪魔も入らず到着すると、入り口近くに設置されているカメラに視線を走らせる。
「村長はアルカナを巻き込むなって言ってたけど…」
向こうから関わってきたのだから、仕方ない。
この後の処理はアルカナにやって貰おう。「ふっふっふっ」と私は意地の悪い笑みを浮かべると、部屋へと入った。そして
「久しぶりだな、アレン副長」
「貴様っ!エアリエルっ!!」
そこには風見に返り討ちにあった男がいた。拘束され身動きの取れないアレンに、私は吹き出す。