☆ナギに相談するべきか
アイの眼下では、マグマが沸沸と沸いていた。
「予想以上に、活動しているな」
ナギとは違い、アイは任務でこの街に来ていた。
任務内容はーー国境付近で起きている健康被害の原因究明。
最近、国境付近の街で咳、嘔吐、頭痛、目の発赤と言ったものが多々報告されている。
水の国にある活火山から、硫化水素などの有毒ガスが流れてきているのではないか。それの調査をしに来たのだ。
ちなみに疫病の可能性もあり、そちらは別の者が担当している。
「風向きに問題はなし」
宙に浮きながら、アイは周囲を観察する。そして「ふむ」腕を組んだ。
「…特に問題はなさそうだな」
ガスマスクのせいで視界は悪いのだが、それでも何か見落としているとは思えない。
やはり疫病の類か?と思いながら、山を降った。
地面に到着すると、息苦しいガスマスクを外す。風を自由自在に操れるアイには、本来要らないのだが万が一の為に付けていた。
暑い…と呟くと、涼風が吹いく。風に髪を靡かせ、気持ち良さそうにしているとスマートフォンが鳴った。メールだ。
【疫病の可能性は非常に低い】
困った表情を浮かべるアイ。
国に言われたのは、原因究明だ。調べましたが分かりませんでした、とは言えない。
うーんと唸っていると、不意にナギの事を思い出す。
「テロか…?」
アルカナの技術力は、繁栄・栄光の世界の技術力を遥かに凌ぐ。
発展の世界の者たちから持ち込まれた、未知によるテロなら、アイ達が把握する事は困難だ。
「…ナギに相談するべきか」
少なくとも、アイよりナギの方がアルカナについて精通している。昨日の話だけでも、充分その事が分かった。