交錯編-壊滅する気で行くわよっ!
警報が鳴り響いている。強風を抜け、暫く歩いた先でアジトのような建物を見つけた俺達は、風見救出の為に侵入していた。ルカと共にダクトの中を四つん這いで進む俺は、前にいるルカに声をかける。
「なぁ…増援を待つ手筈じゃなかったか?」
と問う俺に、ルカは「あぁ?」と濁った声で答えた。と言うか、威嚇した。
「確かに当初はそうだった。けど時間が惜しい」
「その惜しいって言うのは、早くナギを探しに行きたいって意味じゃないよな?」
「…勿論だ」
嘘だっ!絶対に嘘だっ!!能力が宣言だったら、絶対にアウトなやつ!!
抗議しようと思ったが、侵入中と言う事で自重する。しかし目は口ほどに物を言うとは中々の真理で、俺の言いたい事が分かったルカは言い訳を述べた。
「外からでも分かるように、連中は今混乱している。奴等からしてみれば風見を手に入れたのは、棚から牡丹餅みたいなものだ。おそらくどう扱うかまだ決めかねている状態で、指示系統が混乱しているのだろう。この状況に乗じて動くべきだと判断しだけだ」
混乱している今がチャンス、と言うルカの言い分に、俺は首を竦めた。
その言い訳で勘弁してやろう…まぁ、俺も風見の事が心配だし。すぐにでも乗り込みたいって気持ちはあった訳だし。
人がいない部屋を見つけ下に降りると、そこは倉庫の様だった。置かれている物は火薬や武器類か。と、そこで
「おい、これって」
と俺は発見した物をルカに示す。ルカは目を細めた。
「風見のタガーか」
「指輪は…ないな。もしかしたら気付かれなかったのかもしれない」
不幸中の幸いか、と俺は少し安心する。しかし
「もうそろそろ移動するぞ。予想以上に慌ただしい…もしかしたら侵入がばれたのかも」
「!!」
部屋の外が確かに騒がしい。俺は頷くと、風見の武器を仕舞った。そして
「あっちだ!急げっ」
と、思いもしなかった言葉が聞こえ、俺達は顔を見合わせた。一瞬の間があり、
「まさか、風見…?」
「…アイツが大人しく捕まる質じゃないって事を忘れてたな」
そう、風見はあのナギの好敵手なのだ。
「壊滅する気で行くわよっ!」
と気合を入れて拘束具を外したのは、風見が意識を取り戻してから30分後。二人が侵入する30分程前の事だった。