表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

236/325

交錯編-今回だけだぞ

「優勝おめでとう、ルカ」


相手が誰か、しっかり認識するのと同時に、俺は飛び掛かる様に抱き締めた。

色んな感情が沸き起こる。怒りと嬉しさが入り混じり、吐き出す様に名前を呼んだ。


「ナギ…っ」


その名前を声に出した瞬間、俺の中で怒りや嬉しさよりも、愛おしさが沸き起こる。腕の中にいる。もう離さないと言わんばかりに、追跡器の事などすっかり忘れ、力一杯に抱きしめた。


「ルカ…苦しい…」


ナギが腕の中で俺を押すので、少しだけ腕を緩めた。

ナギの顔をしっかりと見る。

ナギは心配するような目で俺を見上げていた。


「ルカ…ちゃんと寝てる?」


「何処かの誰かのせいで、全然寝れてない」


俺の言葉にナギが「うっ」と困った顔をすると、そっと俺の頬に手を伸ばした。


「体は資本だ。しっかり睡眠は取れ」


「ならーーー」


と、俺はもう一度腕に力を込める。一度言葉を切り、ナギの耳元に口を寄せて囁いた。


「一緒に寝てくれるか…?」


「ーーーっ!」


ナギは顔を真っ赤にして、頬に触れていた手を引っ込めようとした。その手を俺に掴まれる。


「もう何処にも行くな」


俺は懇願する。


「お願いだ、帰ってきてくれ」


「…っ」


ナギの目が揺らぐ。その様子に、俺は微かな希望を抱いた。

俺がナギの事を想っているのと同じくらい、ナギも俺の事を想ってる。そう自惚れたっていいだろう?


掴んだ手を離し、ゆっくりと手をナギの後頭部へと動かした。もう片方の手で腰を引き寄せる。後ろからナギの顔を半ば強制的に俺に向けると、ナギは抵抗せず潤んだ眼差しで俺を見た。


「愛してる、ナギ」


だから戻ってきてくれ。

切実な気持ちを孕んだ俺の言葉に、ナギは意を決した様にギュッと拳を握る。

ナギが俺の耳元に口を寄せた。そして


「風見に追跡器を付けられた」


「!!」


思いもしなかった言葉に、俺は緊張した。風見の奴、ナギに取り付けられたのか。ホッとしたのと同時に、


「お願い、外して」


とナギが懇願する様な声を出した。俺の背中に腕を回して服をぎゅっと掴み、顔を擦り寄せる。俺はナギの望みを叶えてあげたいと言う想いと、そんな馬鹿な事をする筈がないだろ、と言う矛盾した気持ち陥る。

ナギは潤んだ瞳で


「ルカ…」


と俺の耳元に唇を寄せる。そして


「ーーー?」


「!!」


提案された内容に俺は目を見開き、逡巡する。ナギを見れば、先程までの弱々しさは何処へやら、意地の悪そうな笑みを浮かべていた。


「三大欲求と言うが、私たちにはもう一つ抗えない欲求がある」


「そうだろう?」と問い掛けるその眼差し。

受け入れ難い、だけど頷きたいそんな誘惑。断らなくては、と理性が訴える。だが、欲望が頷きたいと喚く。

今後の事を考えろ。風見や日向、鵠沼達に何と言われるか。理屈で欲望を押さえつけようとした時


「ルカ…()()()()()()()()()()


とナギは宣言した。俺は悪態を吐く。そして


「〜〜っ!!今回だけだぞっ!!」


苦渋の選択と言わんばかりに悩む俺に、ナギは満面の笑みを浮かべ


「ルカ、ありがとう」


と抱きついてきた。

その笑みが憎たらしくて、俺は一層強く抱き締めると唇を奪う様に重ねたのだった。

ただイチャイチャしてるだけの回だったので、明日も更新します。次回は解説回です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ