交錯編-どう言う関係だ?
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決戦ーーー俺はステラと初めて対峙した。
俺は出そうになった言葉を飲み込む。
『ナギとはどう言う関係だ?』
『ナギは今、何処にいる?』
心が焦る。本心が叫ぶ。それを理性が押し留める。まずはこの決勝を終える事が先決だ。
ーーー賞金目当てかしら?まさか軍資金として?
風見が口にした言葉に同意する訳ではないが、ナギ達にとってこの大会に出る事は、何か意図があっての事だ。それが"出場する"事なのか、はたまた"優勝する"事なのかは分からないが。
『決戦は論理問題!論理的思考が問われる問題、3回勝負です!』
司会の声で、俺の意識は戻される。チラッとステラを見ると俺をジロジロと不躾に見てきており、その態度に俺は眉を顰めた。
『第一問!』
と、司会は俺たちの事を特に気にせず叫んだ。俺とステラはそれぞれの回答ボタンに手を置いて構える。
問題文がスクリーンに表示された。
『問題、金貨が100枚ある。10人に分ける際、順番に誰が何枚の金貨を受け取るか提案し、全員が賛否を投票する。この時、半数以上の賛成なら提案は可決。否決された場合、提案者は貰う権利を失い、次の順番の者が提案する。誰かの案が可決されるまで、これを繰り返す。さぁ、一番目に提案する者はどうすればいい?』
俺はチラッとステラを見た。
ーーー負けたくない
ナギに負けるのを見られたくない、と思うのと同時に、ステラとナギの関係を勘繰る。
もしこいつが、ナギに師事していたら?
血が逆流するような感覚を覚える。事実かどうか分かっていない勝手な不安に、俺は沸々と怒りが湧く。そして、
「ーーー自分に96枚、3番目、5番目、7番目、9番目にそれぞれ1枚ずつ」
『正解』
「!」
余分な事を考えていたせいか、ステラが先に答える。俺は歯軋りしたい気持ちに駆られ、ステラを睨んだ。が、俺は違和感を覚えその視線の先を追った。そして、
「!!」
ナギがいる。
今すぐそばに行きたい衝動に駆られ、俺は能力を発動させようとした。
だが、裏腹に理性が呼び掛ける。
ステラが何か魔法を使った様子はない。ならば、ステラの能力はおそらくーーーと思考が巡り、俺は腕を摩った。
俺たちの様子など気にせずに、司会は『続いて第二問!』と叫ぶ。
『ある店に2人の客がやってきた。一人は男性。ではもう一人が女性の確率は?』
あ、と俺は気付く。これは以前、ナギがトランプで出した問題に似ている。これはつい
「1/2…?」
と答えてしまいたくなる。
ステラが回答ボタンを押して予想通りの回答をして、俺は確信した。
『不正解!』
と、司会の言葉にステラは舌打ちをして、恨めしそうに俺を見た。あぁ、気付いているのか。
俺が妨害している事に。
俺はニヤリと笑う。回答権が俺に移り、俺は得意げに答えた。
「2/3」
『正解っ!』
正解音が響く。
この問題は男性か女性か。一見、2択の様に思えるが、組み合わせをちゃんと考えると正解が見えてくる。この類似問題が、以前ナギが出したトランプの問題だ。
かつて俺は
ーーー馬鹿な奴等だ。カードを表にしてやってみれば、一発で分かる
4枚の中から2枚選ぶ。一枚目にもしハートを引いた場合、残りはダイヤ、クラブ、スペード。つまり赤1枚、黒2枚。男たちが勝つ確率は1/3。
と、解説した。
この発想で今回の問題を解こうとすると、男→男or女で2通り。先程ステラが答えた1/2になってしまい、故に、以前の解説は偶然答えが合っただけで間違っているーーーと思ってしまいそうになるが、実は正しい。
重要なのは、選択肢のうち片方が定まっているかどうか。
ナギの出したトランプの問題は『同じ色』であり、今回の問題は『片方の性別が確定している』のだ。
トランプの場合、仮に一枚目にハートを引いた場合、
♡→♢or♧or♤ よって、組み合わせは3通りになり、色が異なるのは『♡、♧』『♡、♤』の2通り。つまり2/3。
では『片方の性別が確定している』場合、どうなるか?
『性別が確定している』のが一人目だとすると、男→男or女で2通りとなる。
しかし『確定している片方』が二人目だとすると、女→男の組み合わせも足さなくてはならない。
よって、『片方の性別が確定している』場合は『男→男or女』+『女→男』=3通り。そのうち男女の組み合わせは2通りの為、2/3となる。
分かり難かったら、頭の中で入店の様子を描いてみるといい。
二人のうち一人が必ず男だと分かっており、先に男が入ってきた場合、次に入ってくる可能性は男か女の2通りだ。しかし先に女が入ってきた場合、次に入ってくるのは男だと確定する。よって『①男、②男』『①男、②女』『①女、②男』の3通りとなり、男女の組み合わせは2通り。よって2/3となる。
そして今、一番重要なのはーーーステラがこの問題を間違えたと言う事。
ナギなら絶対に引っかからない。故に、俺が仕掛けた妨害は有効だったと言う事だ。それはつまりーーー
第一話でナギが出した問題です。