交錯編-これが仕込みかしら…?
説明文が間に入ります…。読みにくくてすみません。
ステラの試合に、私と日向は臍を噛んだ。
「今の…分かった?」
「いや…」
と、日向は首を横に振る。
当然だが、出題内容を尋ねたのではなく、
「十中八九、何かしらの能力は使っているだろう」
学生が叫んだ通り、妨害した方法を、だ。
「対戦相手の様子から、音の遮断をしたんだろうけど…」
「分からないのは、その方法よね。音の遮断方法は幾つかあるから」
私の言葉に、日向も頷く。
「音源との間を真空にする。逆波長をぶつける。あと空間支配系なら、不可視の空間を作って距離を作る。代表的なのはこんなところか」
「相手は空間系能力者の可能性が高いのでしょう?」
「あぁ、だが一試合目の様子と比べると…」
日向の濁す言葉に、今度は私が頷いた。そう、初めに見せたのは空間移動であって、空間の作成や短縮するのとは違う。
「これが仕込みかしら…?」
そう呟くが、心の何処かで否定していた。
俺の順番が回ってきた。これに勝てば、次は決勝戦ーーーステラとの勝負になる。
『問題!』
と、司会が問題文を読み上げる。
『大地の国と疾風の国の間にある山脈にある鉱山では、かつて何の金属が採れたでしょう?』
「ーーー金」
早押しで、俺は回答する。本当はドゥンケルシュタールだったとナギから聞いているが、ここは史実を答えるべきだろう。
正解音がけたたましく鳴り響く。
『次、第二問!』
と、相手と俺は身構える。
『魔道具は受注型と量産型そして汎用型があるが、汎用型を唯一製造、販売しているのは何処?』
「ファータ」
再度、正解音が鳴る。俺は内心で「自治問題も出るのか」と溜息を吐いた。
ファータの財政を立て直す為、そしてアルカナとの契約で、ナギは霰さんの遺産を公開した。
アルカナはずっと欲しがっていたナギの武器ーーー使用者によって効果が変わる魔道具の情報と引き換えに、ファータを乗っ取るのではなく、援助すると言う契約を交わしたのだ。
革命当時、ファータの財政とアルカナではアルカナの方が優っていた。その為、アルカナはファータを買収ーーー財政破綻させて乗っ取る事も出来たのだ。
しかしアルカナは元々、自国民として受け入れてくれる国が欲しかったのであって、国を作りたかった訳ではない。
また、ファータ国にすれば貴族主義の氷雪の国との摩擦も少なくて済む。そう言った理由等もあり、ファータとアルカナは協定を結んだのであった。
その際により話が有利に働くよう、ナギが遺産を開示したのである。
それが汎用型だ。
これによって、思った以上に早くファータは財政を立て直しつつある。
と、思考がトリップしていた所に、司会の声が響いた。
『最終問題!水の国の観光地、清流の街にはステンドグラスが有名な何の建物がある?』
「……教会」
回答ボタンを押した後、一瞬だけ考え込んでしまった。この出題に、何かしらの意図があるのか、と。
この世界、と言うか発展と栄光の世界には、神とは居れど、宗教と言うものが存在しなかった。それを異世界交流によって、宗教と言う概念が入ってきたのである。
代表的なのは先程言った清流の街の教会と、菴羅の絵画だ。
ステラ同様ストレート勝ちした俺は、ステージに掲げられたスクリーンを下から見上げた。
映し出されたトーナメント表を睨む。
決勝ーーーステラ対ルーカス。
「ナギ…」
お前を必ず、炙り出してやる。