交錯編-あの忍者のやつな
娯楽大会の内容は、毎年異なる。体力勝負の時もあれば、ギャンブルや知的遊戯など様々だ。
その中で、俺やナギと言った使用方法が限られている能力者の参加は珍しい。
「ナギは対人相手の能力だし、しかも交渉とか証明の時にしか役に立たないしね」
と、風見が嫌味を言う。チラッと俺を見て
「あんたも、移動や離脱には向いてるけど競争には向いてないわよね」
「今回はクイズがメインだから、能力の優劣は関係ないぞ」
見下してくる風見に苛立ち、俺は収集した情報で言い返す。
睨み合う俺たちに、参加しない日向が「落ち着けよ」と宥めたのだった。
「俺たちも目的は優勝する事じゃないって、分かってるか?」
その言葉に俺は膨れっ面で頷く。
「ナギと接触してマーキング…追跡器を付ける事だ」
「そう、ルカは試合中に接触可能なら、それが無理な時は、自由行動可能な俺達が。本当ならルカと俺の役割を反対にした方がいいんだが…俺よりルカの方が頭はいいしな」
と言う事で、現在参加しているのは俺だけである。
風見達が先程、観客席にいたのを確認した。そして
「ナギが…いない?」
参加者が並ぶ。全員で12名。
参加者全員の顔を確認する。発表されたトーナメント表も見るが、そこにナギの名前はなかった。
司会が開始の言葉を述べ、第一試合が始まる。
「ナギ…」
お前は今、何処にいる?
大会が始まる。
「おいおい…話が違うじゃねーか」
「変身魔法を使っている様子もなさそうね」
私の知見に日向も同意する。ヒュエトスの奴、私たちに出まかせを伝えたのかしら?険しい表情をしている中、大会は進む。
『第一試合はラン&クイズ!出題ボタン目掛けて競争です。勿論、能力など何でも使ってOK!ボタンを押してから1分以内に回答出来なかった、または間違えた場合は、回答権は相手に移りますっ!』
司会がありきたりな内容の説明をした。ランと言っても、ただ走るだけでなく幾つかの障害物がある。
「なによ、これ。昔のテレビ番組のセット?」
「あの忍者のやつな」
「ルカの奴、クイズがメインって言ってなかったかしら?」
早々に負けるんじゃない?と私は笑う。しかし、
「じゃあ賭けるか?ルカが一回戦目で負けるに」
「日向がそっちに賭けるならね」
私の言葉に日向が首を竦めた。えぇ、言いたい事は分かってる。
私は視線を再度ルカに戻し、そっと呟いた。
「私から逃げ果せた奴の弟子が、この程度で負ける筈ないわ」
そうでしょう?好敵手。