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交錯編-文句なら、ナギに言いなさいよ

 変装の為に被ったウィッグが邪魔である。それに普段かけない眼鏡が気になって仕方がない。

隣に座る風見も同じ様に不愉快なのか、ずっと不機嫌だ。


「全く…なんでこんな事に」


つい口から出た愚痴に、風見がギラリと睨んで反応した。


「文句なら、ナギに言いなさいよ」


「……」


風見は「何よ?」と挑発的な目をする。

しかし俺は何も言わなかった。いや、言えなかった。


ナギの行為は弁明し難い程に非常識だったから。


俺はひっそりと溜息を吐く。


「なんでアイツ、アルカナに乗り込んできたんだか…」


疾風の国にて、開催の言葉を聞きつつ俺は呟いた。

そう、俺たちは現在、疾風の国主催の年間行事ーーー娯楽大会に来ていたのだった。




 それはまさに、青天の霹靂だった。


「鵠沼総帥っ!!」


と、怒鳴る様に総帥室に入ってきたのは、行方不明のナギだった。

丁度その場にいた俺と風見は「え!?」と驚愕するが、ナギは俺達を一瞥すると「二人とも、久しぶり」と簡単に挨拶を済ませ、ツカツカッと総帥に詰め寄ったのだった。


「アルカナで保管されてる初期の研究データ諸々を出せっ!」


「何を今更…。お前がアルカナ幹部時代に全部目を通していた筈だが?」


「初期の、っと言っただろう!幹部IDでも閲覧出来ないように隠された研究計画書やデータがある筈だっ」


はて…?と鵠沼総帥は首を傾げる。が、次の瞬間、ニヤリと笑った。


「もしそんな物があるとして、タダで見せると思うか?」


「私を脅す気か?」


睨むナギに、鵠沼は「なら放置すれば良い」とバッサリと切った。


「そのままにすれば良い。既に250年以上前の遺産だ」


「っ!!やっぱり知ってたな!」


苦々しく睨むナギに、鵠沼総帥は艶笑を浮かべた。


「それか、アルカナで対処してもいいぞ?何人か抜選して処理チームを作ろうーーーお前達が、胸襟を開くと言うのなら」


だが、それは出来ないだろう?と言いたげな鵠沼総帥。

実際に鵠沼総帥の言う通りなのか、ナギは何も言い返せずにただ睨む事しか出来ずーーーフンっと悪態を吐いて踵を返した。


「おいっ!待てっ」


と、俺は急いでナギを捕まえようと手を伸ばす。が、


いつの間に出したのか、ナギは背丈程ある杖を握っていた。軽くトンッと杖で地面を突き、


「動くな」


「!!」


俺だけではなく風見も驚愕する。

これが、ナギの自己流詠唱(オリジナル)ーーー支配の杖。


「後悔させてやるからなっ」


覚えてろっ!と負け犬の台詞を吐いて、ナギは本当にアルカナを後にしたのだった。

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