交錯編-誤魔化していた?
また場面が変わります…。コロコロ変わってすみません(~_~;)
「実は3年前まで、ナギはこの時の事を誤魔化していた」
「誤魔化していた?」
首を傾げる俺に、ゲフリーレンはため息混じりに言う。
「そう…ナギ達と手を組んだ当初『話を信じてもらえないから能力が”宣誓“に変化して、説得して村を出てきた』と言っていた」
「……」
「しかしナギが自己流詠唱を使える事が発覚すると、暴露する様に言って来たのだ」
暴露と言うか「実はさぁ」と言う軽いノリだったらしい。その様子が容易に想像でき、俺とゲフリーレンは同時に溜息を吐いた。
俺は写真を取り出すと、幼少期のナギを見つめる。
能力を変えられたナギーーー風の妖精。
「羽をもがれた妖精、か」
ナギは以前、霰の魔道具を手にした際に呟いた言葉。
『よりにもよって』
それは、一度手放した能力の事を言ったのか。
哀愁に浸る俺に、ゲフリーレンはわざとらしく咳払いをして意識を戻す。俺は写真から視線をゲフリーレンに向けると「それで」と問うた。
「助言者と協力者については?」
「…それについては、私ではなく本人から聞いた方がいいだろう」
ゲフリーレンはそう言うと、俺にメモを渡した。そこには走り書きで、電話番号が記載されている。
「その番号へ電話しろーーー私からの紹介だと言う証明になる」
「…俺の行動はお見通しって事か」
事前に用意していた番号ーーー打ち合わせをされていると言う事は、そう言う事なのだ。
俺の行動は読まれていた。
「フルメンのあの電話も、俺が盗み聴きしてる事に気付いてやったんだな」
ジロリと睨む俺に、ゲフリーレンは「全てではない」と否定した。
「この番号などは、ナギの指示ではない」
「なんだと?」
「ナギからは『黙秘せよ』と言われている。だが、私たちはナギの協力者であって、部下ではない」
「…つまり、俺の態度次第で話すって事か」
そうだ、と言わんばかりにゲフリーレンは頷いた。
「フルメンにどう脅迫したのかは知らんが、私にやった様な“駆け引き”をすれば、話そうと決めていた」
「……」
何と言えばいいのか分からず、俺は微妙な表情を浮かべる。
ゲフリーレンには脅迫材料を用意していたが、フルメンに対しては送り主不明の写真のお陰である。俺自身の手柄ではない。
しかしゲフリーレンはそんな事は露知らず、言葉を続けた。
「その番号の相手が無条件で話してくれるかは分からないが…嘘は言わないだろう」
その番号は、ゲフリーレンが“知っている情報”を偽りなく話したと言う証明。故に、下手に嘘を吐けば矛盾が生じると言う事。
俺は礼を述べると退室した。
扉が完全に閉まると、ゲフリーレンはそっと呟く。
「あいつを救ってやってくれ…」
次回は小噺です。