交錯編-何しに来た
ゲフリーレンは、いきなり訪ねてきた人物に非難の眼差しを向けた。
フルメンからの連絡で事前に来る事は分かっていたが、本人から電話の一本も入れずにいきなり訪ねてくるとは。礼儀知らずも甚だしい。
「…何しに来た」
それでも口火を切ったのはゲフリーレンだった。
俺は真剣な眼差しでゲフリーレンを見返す。
「ナギは何処にいる」
「知らんーーー何故、私が知っていると思う」
ゲフリーレンの問いに俺は「フルメンと繋がっているだろう」と睨んだ。ゲフリーレンは呆れて溜息を吐く。
「仕事上、繋がりがあるだけだ。何か勘違いしていないか」
「今は密にやり取りする様な事はなかった筈だがーーーあぁ、例えば貴族どもの性癖をバラさないで欲しいとか?」
「!!」
俺の一言に反応して、ゲフリーレンは憎々しげに睨んできた。その姿を俺は鼻で笑う。
「俺が何処の誰か忘れたのか?」
事の発端は、紫の能力値の低下だった。
ナギの助言で再度能力分析を行なった所、能力が「分子運動を低下させる」事から全く別の物になっていたのである。
「紫の今の能力は“放電”。静電気を意識的に溜めて、任意のタイミングで放電できる」
そこで俺はキッとゲフリーレンを睨んだ。
「ごく僅かだが、幼少期に能力が変化する者がいる。その原因は大抵ストレスによるものだ」
俺は一度言葉を切ったが、語彙を強めて続けた。
「自己流詠唱の様に、魔力は防衛機能を有している。つまり紫の魔力は“分子運動を低下させる”事より“ストレスを軽減させる”形へと変化した筈だ」
「……」
ゲフリーレンは依然として無表情だ。知っているのだろう。
俺は底意地の悪い笑みを浮かべた。
「静電気による放電は普通に起こる現象だが、人と人との場合、痛みを伴う。つまり他者に“触れる事を忌避させる”」
「……」
ここまで話してもゲフリーレンは無表情だ。俺はダメ押しで言う。
「”触られる事を忌避させる“とは“他人に触られない様にする”と言う事。“他者に触れられない事”がストレス軽減となるって事はーーー」
俺はキッと睨んだ。ゲフリーレンが行なった行為ではないのだが、それでも胸糞悪い事には変わりない。
俺の能力は“宣言”ではないが、俺は宣言するように言った。
「紫は氷雪の国で暴力を受けていた、そうだな?」
敢えて"暴力"と言ったのは、彼女の名誉の為だ。
俺の言葉にゲフリーレンは観念した様に息を吐いたのだった。
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