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小噺-幼少期編

 アテナ様にナギを預けられて2年が過ぎた頃。フルメンはアルカナに連絡して、ナギをアルカナに入れようと考えていた。


「私の元で学ぶより、アルカナで幹部候補として教育を受けた方がいいだろう」


と、言うフルメンの言葉にミラはジト目を向けた。


「単に、面倒を見るのが嫌になっただけじゃないの?」


「そんな訳あるか、、」


と言いつつ、目を逸らすフルメン。その様子にミランダは「おや?」と訝しんだ。フルメンにしては、どうも歯切れが悪い。

フルメンはわざとらしく咳払いすると「では、よろしく」と言って入団試験の日程をもぎ取って行ったのだった。




 そして試験当日、フルメンが連れてきた子供は覇気のない様子で、試験官のミラを見上げた。


「名前は?」


「ナギ」


「……」


ナギと言う名に、ミラはフルメンをチラリと見た。しかしフルメンは何も言わない。

内心で悪態を吐きつつ、ミラはナギの前に箱を取り出した。箱には丁度腕が入るくらいの穴が空いており、中が分からなくなっている。


「この中には赤と青に着色された石が1つずつ入っている。1つだけ取り出し、赤を引けたら合格。青なら不合格だ」


「…いつからアルカナの試験は運(だの)みになったんだ?」


ミラの説明に、フルメンは額を抑える。その様子にミラは「これはれっきとした試験だ」と睨んだ。

そして


「その前に、暑いので窓を開けてもいいですか…?」


と、ナギがおずおずと手を挙げた。

確かに暖房と加湿のし過ぎで、蒸し暑い。少し換気した方がいいだろう。ミラは「どうぞ」と快諾すると、ナギは窓に近付きーーーバッと全開にする。

少し開けるだけだと思っていた二人は驚愕し、ミラは「それは開け過ぎ!」と非難しようとした時だった。


ナギは間髪入れずミラの持っていた箱を奪い取ると、手を突っ込みーーー抜くのと同時に掴んだ石を窓の外に投げる。

一連の動作に迷いはなく、二人は呆気にとらわれた。そしてナギは淡々と言ったのだった。


「引いた石を確認する前に紛失してしまいましたが、残っている方を確認すれば問題ないですよね」


その言葉にフルメンは首を傾げーーーミラは声をあげて笑った。


「そうくるかっ!確かに、フルメンじゃ手を焼くわけだっ」


二人のやり取りに理解が追いつかないフルメンは、恨めしそうにミラを見た。ミラは意地の悪い笑みを浮かべ、解説を始める。


「これは試練じゃなくて試験だ。運頼みな筈がないだろう。箱の中には、元々青い石が2つしか入っていなかった」


「!」


フルメンは驚愕し、そしてナギを見た。ナギは知っていたかの様に、無表情である。

ミラはそのまま解説を続けた。


「この試験で見ている点は、裏を読む事。素直に試験問題を信じない、それが出来れば合格だ」


「試験の筈なのに、運頼みーーーそこに疑問を持ち、裏を読むと言う事か」


ミラは無表情のナギの頭を、ポンッと撫でた。ナギは一瞬緊張する。

その様子に「可愛げは一応あるのな」とミラは意地悪そうに笑った。


「箱の中身がどちらも青だって見抜くだけで良かったのに…まさか本当に赤を引いた、とするなんて」


そう言って箱から残った方ーーー青い石を取り出す。

赤と青の石が入っていた場合、引かなかった石は青。つまり引いたのは赤、だと言えるこの論法。


「"引く確率は1/2なのだから、赤ではなく青を引かせて欲しい"と言うだけでも、合格だったんだぞ?」


こいつは将来、大物になるな…とミラは苦笑したのだった。

交錯編の別名は幼少期編です笑。

次回から本編です。

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