解説:今は俺たちに守られてくれ
ルカは目の前にいる、髪や瞳の色だけ異なる自分そっくりの男を睨んだ。
日向は「熱い視線を向けられても困る」と茶化す。
「無駄口を叩くな。」
「はいはい。本題に入りますよ。
ナギから聞いてるよな?例の薬で能力が発現したんだと。自我を失わず、しかも4大元素・水が使えるなんてな。」
もう少し、治験を行っても良かったかもな。もしかしたら、また研究が再開するかも。
そう言う日向に、ルカは呆れながら「…ナギに殺されるぞ」と言う。
「そうそう、ナギから聞いたか?あいつ、俺がいなかったら危なかったんだぜ」
「……また話が脱線しているんだが」
ニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべる日向。ルカはムッとしながら、つい聞き返した。
「あいつと何かあったりしてないだろうな」
「夜遅くまで一緒にいたぐらいかな?」
「……情報交換の為にだろ」
ルカはこめかみを押さえた。
後でナギに確認しておこうと誓う。
万が一、億が一、日向とそんな関係になっていないと思うが、確認する事は悪い事じゃない。もちろん、宣誓を使って貰って。
そんな二人とは別に、その場にもう一人いた。
紫は自分の頭上で双子の様にそっくりな男が喋っている状況に、大人しくしていた。
現在、迷子紐の様な拘束具で日向に繋がれている。これには魔力を封じる効果があるのだ。
話が終わったのか、ルカと呼ばれた男は紫の目線に合わせるようにしゃがむ。
「君が村崎とどんな関係だったかは知らない。
ただ、これから村崎と敵対していた者達と生活して貰う」
「……」
黙っている紫に、ルカはそのまま言葉を続けた。
「憎くてもいい、いつか復讐したいと思ってもいい。だが、今は俺たちに守られてくれ」
ルカの胸元に付けられた、蓬菊を咥えた梟のブローチがきらりと光る。
いつか一人で生きていけるようになるまで。
その為に【ミネルバの梟】はあるのだから。