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交錯編-これを何処で手に入れた?

 ルカが無理矢理、執務室に入ってきた。丁度居合わせたレイがルカを非難したが、ルカは机に写真ーーーのコピーを叩きつけ私を睨んだのだった。


「知っている事を全て話せ」


それはミネルバの梟のトップとしておよそ正しい姿ではなかったが、私は咎めずにレイに退室する様に指示した。

レイはルカに苛立ちとーーー僅かな心配する眼差しを向けて出ていく。扉が閉まると、私は置かれた写真をまじまじと見たのだった。


「これを何処で手に入れた?」


「知っている事、全て話すなら答える」


私はもう一度写真に目を落とす。これを持っている人物は限られる。


ナギの部屋で見つけたのか?ーーーいや、ナギがそんなミスをする筈がない。


だが、故意で置いていった可能性はある。

しかしもし別の奴から入手した場合、どうする?それをナギが想定していなかった場合はーーー

思考がグルグル回る。ルカは痺れを切らしたのか「おいっ!」と吠えた。


私は眉間を押さえ、正直に言う。


「これをお前に渡した奴の真意が分からなければ、話せない」


「……」


私の言っている事が理解出来るが故に、不服な表情を浮かべつつ押し黙るルカ。

ルカは忌々しそうに、渋々答えた。


「ナギと入れ替わる様に現れたんだよ」


そして当時の様子を話す。

話の内容に私は頭を抱えたのだった。


「ナギの指示なのか、それともアイツの独断か…?」


ーーーナギ、だから言っただろう。


「アイツは劇薬だぞ」


ルカの双子の兄ーーーソルは。




 私は意を決すると、立ち上がり窓の外を眺めた。空は曇天、いつ降り出すか分からない。


「…私の聞いた話でいいのなら」


そう一言断ると、ルカは神妙に頷いた。今はどんな些細や情報でも欲しい、と言ったところか。


ーーーナギ、お前をこんなにも真剣に愛してくれる者がいるぞ。


そう心の中で呟いて、私は覚悟を決めた。





「この子の面倒をよろしく」


そう言って私の目の前に現れたのは、なんと知恵の女神アテナ。

なんの前触れもなく、書類仕事に没頭していた私は寝耳に水だった。唖然とする私に、アテナは作り笑顔を浮かべて私の顔を覗きこむ。


「フルメン、貴方、この子の身元保証人になりなさい」


「はぁ!?」


いきなりの事で、相手が上位存在と言う事を忘れ、私は素っ頓狂な声を上げてしまった。急いで「失礼しました」と述べ姿勢を正すと、アテナの後ろに佇む少女を見た。


黒の瞳に、赤い髪。


この世界では、瞳と髪の色は同じで生まれてくる。

例外として、白またはそれに近しい色は瞳がグレーや薄い水色だったりするが、この子の場合はおかしい。


ーーーいや、寧ろおかしくないのか。


上位存在の眷属になったのなら、真理の下にある常識は当てはまらない。

おそらく、髪か瞳のどちらかの色を変えられたのだろう。

私は再び視線をアテナに戻した。


「畏まりましたーーーただ、この子は一体誰なのか教えていただきたい」


「それはこの子から聞き出しなさいな」


意地の悪そうな笑みを浮かべ、アテナはふふんっと鼻で笑った。そして「じゃ、私帰るから」と言い残し、こちらが反応する前に姿を消していたのだった。


「……」


マジかよ…と言う表情を隠せず、私は数秒間、思考停止した。そしてハッと我に返り、急いで置いてかれた少女を見やった。

少女は暗い眼差しを私に向ける。その瞳には光が宿っておらず、底が見えない穴の様な眼だった。


その虚空に呑み込まれるんじゃないかーーー女神の眷属と言う得体の知れない子供に、私は恐怖を抱く。生唾を飲み、一筋の汗が額から流れた。そして


ぐうぅぅぅ


と、この場に似付かない音が響き、私は目を見開いた。次に苦笑する。


「食事にしよう。自己紹介はその時に」


そう微笑みかけると、少女は静かに頷いたのだった。


ついにナギの過去に触れます。


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