交錯編-誰のせいだっ!
「いいのか?嘗てクーデターを引き起こそうとした時、上位存在に止められたのだろう?」
フルメンは鵠沼に聞いた。鵠沼は一度目を伏せ、意を決するとゆっくりと開いた。
「あぁ、だがあれから250年。この世界の国土や国籍を持たぬとは言え、アルカナーーー今の発展の世界の人間の殆どが、既に栄光の世界の住人との子孫だ」
「血が混じっているのだから、上位存在からの干渉はない、と?」
ヒュエトスは嫌味ったらしく言った。しかし鵠沼は相手にせずに答える。
「アルカナ派はそう考えたらしい」
「……」
鵠沼の言葉に私とフルメンは無言になる。
上位存在達の境界線が分からないのだ。何が逆鱗なのか。どこまで許されるのか。
悩む私に、鵠沼は少しばかり申し訳なさそうに言ったのだった。
「何より、祖先が上位存在から祝福を受けたと言われる国ファータが滅ぼし、王女をアルカナに売ってもパンタシアに天罰は下っていない。試してみる価値はある、と」
鵠沼の言葉に三人は顔を硬らせ、フルメンは恐る恐ると言った様子で私を見た。
鵠沼は勿論、フルメン達も私の経歴を知っている。
私は鼻で笑ってしまったのだった。
「それについては、これから報いを受けるんだよ」
と。
そんな事より、と私は話を元に戻す。今後やるべき事を詰めていかなければ。
「パンタシアとしてはロシェク大陸ーーー主に大地と氷雪にいい顔をしていたい筈。現に今度、貿易回復の祝賀会を開くしな」
私の言葉に、全員が頷いた。
「火炎の国にも招待状が届いている。お前とルカを参加して貰おうと思っているが」
「そうだな、フルメンにはやってもらいたい事があるし」
チラッと少し上目遣いでフルメンを見た。フルメンは一瞬眉を顰め、嫌な予感がするとばかりの顔をする。
私はニコッと作り笑顔を浮かべて言ったのだった。
「菴羅に火炎軍を派遣しといて欲しいんだ」
当然、そんな事を言ったら全員から猛反対されるだろう。
案の定、皆、私の言葉を解するまでに一拍ほど時間を有し、次の瞬間怒鳴っていた。
「馬鹿かっ!」「何を考えてる!?」「宣戦布告するのと同じだぞっ」「火に油を注ぐ気か!」
予想通りの反応に、私は全員を宥めた。
「みんな歳なんだし、血管切れるよ?」
「誰のせいだっ!」
「まぁ聞けって」
私は得意げに笑った。