解説:街の人を救ってくれないか…。
私は缶詰め状態で報告書を書いていた。内容は清流の街であった村崎についてだ。
村崎が死んだあの日から3日。魔薬は24時を回る前に全て回収した。
どうして発見出来たか?どうして全部回収出来たと分かるのか?
ーーそれは仕掛けた張本人に、直接聞いたからだ。
私は村崎から離れると、すぐに教会へと向かった。
「スイラン、貴女に託宣をしてもらう」
「…私には、姉様の様な能力はありませんが」
あぁ、そうだろうな。スイレンと同じ能力は持っていないだろう。だが、スイランの嘘に付き合っている時間はない。
私は単刀直入に言った。
「貴女は降霊術が使える筈だ」
「!」
何故…と、驚愕の色を隠せないスイランに、私は追い討ちをかける。
「ちなみに姉のスイレンは神の声を聴いていた訳でもない。彼女の能力は幽体離脱だ」
スイレンの宣託の正体は、夜にスイレンが抜け出した霊体が見聞きした事を話していたのだ。
「過去の託宣内容を調べたら、全て"過去に起こった事"または"現在進行中の事"であり、遠い未来は言った事がない」
情報を基に割り出されるような近い未来は、予想して宣託した事はあるようだ。
しかし地震と言った災害や突発的な火事などを事前に宣託した事が無いのだ。
「こう言うのを、ホットリーディングと言うらしいな」
インチキな占い師がやる手の一つ。
そう言うと、スイランは憤怒した。
「姉様を悪く言わないで!!姉様は能力を悪用などしていない!」
確かに宣託のシスターとして有名になり、寄附金は増えた。しかしそれで私利私欲を満たした事はない。
私は「分かっているよ」と呟いた。
さっき言ったように、託宣の内容は確認している。それは全て街の事を思っての内容ばかりなのだから。
私は「そんな事より」とかぶりを振った。今は時間がないのだ。
「スイレンの能力が幽体離脱なら、貴女の発言はおかしい。
殺される日の夕方に、自分が殺されると宣託出来る筈がないのだから」
そう、スイレンがもし別の殺人事件について宣託するのなら"犯人"は言える。幽体状態で殺人事件現場を見た場合に限りだが。
しかし事前に"誰が"殺されるかは分からない。
同様に、自分の死も言える筈がないのだ。
「つまり、死後に聞いたんだ。降霊術を使って」
スイランは「姉様が言っていた」と言った。だから情報も話し口調で、気付き難かった。
おそらく、初めから疑っていなければ気付かなかっただろう。
「幽体離脱能力も、降霊術も隠していた理由は分かる。
だが、その能力で街の人を救ってくれないか…。」
どちらも人から忌み嫌われる能力だ。
幽体離脱は「勝手に見られているかもしれない」と言う理由で。
そして降霊術は「死後、暴かれるかもしれない」と言う恐怖で。
隠し事を暴かれる事を恐れるのが、人なのだ。
スイランは意を決して言った。
「貴女は、誰を呼び出したいのですか」
そして村崎の霊から、直接聞き出したのだった。