交錯編-あぁ、たしかに
予想していたとは言え、鵠沼の言葉の衝撃は大きかった。ヒュエトスは狼狽える。
「4カ国が睨み合い、と言うのは分かった。だが、何故アルカナがパンタシアからドゥンケルシュタールを輸出するよう促したのかが分からない」
それこそ、パンタシアが外貨を稼ぎ資金を得る方がアルカナにとってリスクではないのか?その問いに、私は「まず前提を話した方が良さそうだな」と頷いたのだった。
「まずパンタシアには能力者が少ないだろう」
「あぁ、たしかに」
私の言葉にフルメンは頷く。私は言葉を続けた。
「実は昔からある問題提起なんだが、母体にいる間ーーーもっと言うと肉体が作られている最中からドゥンケルシュタールやリヒトシュタールと言った“魔力に影響を与えるレアメタル”が側にあった場合、その影響を受けるのではないか?と言うものがあった」
知っていたのか、フルメンは首を傾げた。
「しかしレアメタルの量が十分確保出来ず、実証されていない筈だろう?」
「そう、それをアルカナ派は”正しい“と仮定して、パンタシアに目を付けた。そしてドゥンケルシュタールを探した結果、ドンピシャりと引き当てたんだ」
そうだろう?と私は鵠沼に聞く。鵠沼は肯定と示す様に首をゆっくりと縦に振り、私は頷いた。
「私が作った資料は霰さんが遺した資料を手掛かりにルカに調べて貰ったものだが、探索器の理論自体は簡単な物だ。アルカナ派の技術者も同様の物を作成したと考えていいだろう」
私はチラリと三人を見た。
「問題はドゥンケルシュタールのせいで”パンタシアは能力者が少ない”と言う事ではなく、ドゥンケルシュタールが埋まっているあの土地では“魔法が使いにくい”と言う事だ」
私の言葉にフルメンは首を傾げた。鵠沼は私の言いたい事が分かっているのか無言である。
鵠沼が口を挟まないので、私はそのまま話を進めた。
「ドゥンケルシュタールの効果威力は純度による。自然物状態ではそこまで純度は高くないから、全く魔法が使えないと言う事にはならないがーーーそれでもあの土地は、ある意味で魔法からの攻撃に強いんだよ」
私の言葉に、ゲフリーレンは合点いったらしく頷いた。
「アルカナの技術が優れているとは言え、メインは魔法…。国を守る障害物を取り除いてから、乗っ取ろうとしていたと言う事か」
入念過ぎるぜ、全く。と私は悪態をついたのだった。