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交錯編-そんな物騒な考えは持っていない

過去編最終話の真相です。


時系列で言うと「解説:100を知る奴だよ」を読み直して頂けると分かりやすいかもしれません。


「よく調べたな」


フルメンの最初の一言がそれだった。この場にいるのはフルメン、ゲフリーレン、ヒュエトスそして鵠沼であり、全員が今さっき私が提出した書類に目を通していた。

私は「苦労したよ」と苦笑いを浮かべる。


「大地の国とパンタシア、そしてアルカナが繋がっていたのには本当に参った」


私の言葉にヒュエトスは溜息を吐く。


「ドゥンケルシュタールの採掘場所及び推定埋蔵量…よくここまで調べ上げたな」


「主に霰さんのお陰だ。あの人が色々と調べてくれていたからな」


皆が注視しているのは、添付資料の一つである。それはパンタシアの国内図であり、私の手書きで国土の半分近くが赤く塗られていた。


「リヒトシュタール、ドゥンケルシュタールどちらもその効果と産出条件が不明だった為に市場に出回る量が少なかったが…これでアルカナと大地の国は、鬼に金棒って状態になりかけた訳だ」


先日判明したアルカナによるリヒトシュタールの密輸事件。風樹の鉱山に残っているリヒトシュタールの量と、アルカナに流れたであろう搬出量を考えると半分近くがアルカナの物になっていると思われる。

そして今回判明したパンタシアのドゥンケルシュタールーーー


「リヒトシュタールの大量輸入に、ドゥンケルシュタールの埋蔵が発覚したパンタシアと手を組んでいる事…嫌な予感しかしない」


アルカナは3年ーーーもう少しで4年前に大地の国とある取引を行っている。

そう、ドゥンケルシュタールの効果範囲を弄る方法を。


「おそらくパンタシアとアルカナ派が先に手を組んだんだろうな」


私は自分で書いた赤い範囲を睨みつけながら言った。


「順序として、

1、アルカナ派が霰さんの技術の解析に成功

2、パンタシアがドゥンケルシュタールの産出地と発覚

3、パンタシアと手を組み、大地の国にまず技術を売り付ける

4、パンタシアが大地の国にドゥンケルシュタールを売り付ける

ここで肝心なのは、売り付ける量のバランスだな」


私の言葉にゲフリーレンは頷いた。


「一国ばかり力を持ち過ぎれば、大陸が違えどいずれ侵略しにくるだろうからな。パンタシア、アルカナ両者ともロシェク大陸内は常に三つ巴ならぬ四つ巴であって欲しい筈」


「そう、だからアルカナは氷雪や火炎に情報を流したり危機感を煽った」


私はチラリと横を見た。鵠沼は何も言わない。

私は悪態をつきつつ、言葉を紡いだのだった。


「初めはアルカナ派の金策だと思ったが、あまりにもリスクが高い。本当は別の目的があっただろうーーー例えばロシェク大陸の4ヵ国同士を争わせるのではなく、4カ国でパンタシアを攻めさせるとか」


「…そんな物騒な考えは持っていない」


ようやく口を開いた鵠沼は、否定の言葉を述べる。私に真剣な眼差しを向けてきた。


「パンタシアを4カ国に滅ぼさせて、アルカナに利益があるのか?」


「そうだな、4カ国“が”滅ぼすのは意味がない」


鵠沼の言葉に、私は底意地の悪い笑みを浮かべて返した。そして言い放ったのである。


「ロシェク大陸の4カ国が睨み合っている間に“アルカナが”パンタシアを滅ぼした方がいいよな」


私の言葉に三人はハッとした。フルメンは私を見、次いで鵠沼を見る。

鵠沼は顔色一つ変えず、淡々とした口調で言った。


「そうだ、アルカナ派はこの世界に自国を作ろうとしている」


と。


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