交錯編-掛かればの話だけどね
私は憎々しげにエアリエルを睨んだ。怒りに手は震え、今すぐ殴りつけたい衝動に駆られる。
「…赤だ、私にはお前が赤眼赤髪に見える」
「嘘ね、貴方には私が黒眼黒髪に見える筈よ」
忌々しいエアリエルがバッサリと切り捨てる。
今まで無言だった風の国の使者トラモンターナは、咳払いをして言ったのだった。
「つまりアントーニオ殿は故意に襲撃者を間違え、我が国民を犯人に仕立て上げた、と言う事でしょうか」
「ちょっと待てっ!話が飛躍し過ぎだ!!何故そうなる!?」
「では何故、アイが危害を加えてきたと主張されたのですか?貴方自身が今、彼女の色を黒だと認識しているのに」
「それは、、当時は赤にーーー」
「あぁ、一応宣言しますが私の髪色はずっと変わっていないですよ。当時も、今も」
「ーーーっ」
八方塞がりになった私に、議長を務めていた疾風の国の大臣ヒュエトスが決断を下す。
「風の国に危害を加えられたと言うパンタシア側の主張は否認。パンタシアは無罪だった風の国への謝罪と、来年度世界会議参加申請を取り消すとする」
そしてニヤリと笑って
「ま、後は当事者同士でなんとかしろ」
と言ったのだった。
議会が終了した後、早々にアントーニオは私の所へとやってきた。怒りに眼は血走り、周囲にまだ各国の代表がいるにもかかわらず、間髪入れずに私の頬を叩く。
私はわざとらしく床に倒れ、悲劇のヒロインの如く呻いた。アントーニオは怒鳴り散らす。
「貴様、よくもっ!!」
「事実確認を怠り、安易に抗議なんてした自分を恨んだら?」
頬を押さえながら、私は立ち上がり艶笑を浮かべる。さぁ、こいつが怒りで正常な判断が出来ない様に、生意気な女を演じよう。
「そんな短気だから、十何年経っても未だに国として不安定なのよ。ファータを滅ぼして一体何年経ってると思っているの?」
「貴様っ!ーーーいいのか、お前の代わりに姉のシルフィードに当たってもいいのだぞ!」
そう言って、アントーニオはシルフィードの髪を無造作に掴み、床に打ち付けた。
シルフィードは治りかけの脚に衝撃が堪えたのか、苦痛に顔を歪める。しかし私に助けを求める訳でもなく、寧ろアントーニオに強い意志を込めた眼差しを向けたのだった。
「いいのか、後でどうーーー」
「後で、とはいつの事でしょうか」
アントーニオの言葉を遮って、シルフィードは言った。
「いつまでも、その地位があると思わない方がいいわ」
私はシルフィードに手を差し出し、立ち上がるのを手伝った。シルフィードは「ありがとう」と微笑み、そしてアントーニオへと向き直る。
「今すぐ、部下に連絡を取ってみては如何かしら」
「っ!」
シルフィードの言葉に焦りを感じ、アントーニオはすぐに電話を取り出した。急いで信頼している部下にかける。
その様子にーーー風の妖精達は悪戯な笑みを浮かべるのだった。
「「掛かればの話だけどね」」
明日も更新します!




