交錯編-皆様、ご無事で何よりです
ブックマークありがとうございます!!
年末から年始にかけてノロウイルスと思しきものに罹り、座り込んでました(;ω;)
年越し蕎麦も、御節も食べれなかった…。
更新が不定期ですみません_| ̄|○
火炎の軍に誘導されながら、菴羅へと上陸する。私はボートから降りると、先に救助されているだろう統治者を探した。そして
「見つけたっ!」
意外な事に、統治者はまだボートから降りていなかった。ゆっくりと降りてくる。
最後にアイが出てくる際は、作り笑顔を浮かべながら恭しく手を差し出していたのを見て、私は吐き気がした。統治者の手を取りながら出てきたアイは、私に気付いたのかパッと表情を明るくし、手を振る。
私は胸が少しキュッとなって、急いで駆け寄ったのだった。
「皆様、ご無事で何よりです」
そう言った時だった。
「アントーニオ、覚悟っ!!」
統治者の背後から、もっと正確に言うのなら、救命ボートを操縦していた船員が、統治者に頭を目掛けて剣を振り下ろそうとした。
統治者は驚愕しつつ、ほぼ反射的に私を掴み後ろへと回す。そう、盾にする為に。私は恐怖で目をギュッと閉じた。
「!!姫様っ」
あいては私が誰なのか分かったのか、振り下ろそうとした剣を止めた。そして私はその聞き覚えのある声に、閉じていた目を見いたのだった。
「ファーディナンドッ!」
私が愛妾として幽閉される前まで交流があった、パンタシアにいる数少ないファータの元貴族に一人だった。
私は喜びと同時に、震える唇で懇願したのだった。
「やめて、ファディー」
「っ!」
歯を食いしばり、憎々しげにファーディナンドは私の後ろを睨んだ。
統治者は底意地の悪い笑みを浮かべ、片腕で私の首を軽く締める。そして空いているもう片方の手で、ポケットを弄ったのだった。
「用意はしておくものだな、…?」
気持ち悪い笑みが、段々と間の抜けた表情になっていく。あれ?っと言う言葉が聞こえてきそうだ。
何かを探している統治者に、一歩後ろにいたアイが声をかけた。
「お探しの物はこれですか?」
そして差し出された物は、折り畳みナイフだった。目の前に現れた失せ物に、統治者は一瞬ハッとし、そして
「お返ししますよーーーそして返してもらいます」
と、アイは力一杯に統治者の顔面を殴ったのだ。
その場にいた全員が驚愕し、動きを止める。そして
「きゃぁぁぁ!!」
と、正妻が大きい悲鳴を上げた。
「暗殺者よ!風の国が暗殺者を送ってきたわ!!」
少し演技が入っているような叫び声を上げて、正妻は近くにいた火炎軍に助けを求める。アイのお陰で統治者の腕から自由になった私だが、どうしてこんな事をしたのか分からず、唖然としていた。
「おいっ!何があった!!」
そして正妻の声に人が集まってきてしまう。先程挨拶したゲフリーレン大臣や、火炎の軍服を着た人物が私達を見て驚愕した。
そして
「チェンジリング」
と言う声が聞こえた瞬間、アイは姿を消す。そして代わりに一枚の写真が現れた。
私は地面に落ちた写真を拾い
ーーーあぁ、やはりそうか
意を決したのだった。