交錯編-これは保険だった、、
救援信号をキャッチしてくれたのか、海岸には火炎の軍が待っていた。
無事に救命ボートから降りた俺は周囲に違和感を覚え、そしてその正体に気付いた瞬間、固まったのだった。
「ご無事で何よりです、ゲフリーレン大臣」
「まさかこんな災難に見舞われるとは思いもしませんでした。フルメン中将」
しかし共に上陸したゲフリーレンと、菴羅で待機していたフルメン達は白々しいやり取りを行う。俺はフルメンを睨みつけたのだった。
「いつから計画が変わったんだ?少なくとも俺達が乗船する前には、既に計画は変更されていた筈だ。じゃなきゃ大地の国の植民地である菴羅に火炎軍がいる筈がない」
俺の問いに、フルメンは歯切れ悪く応えた。
「これは保険だった、、訳でもないが…」
「俺が聞いていた計画は、レジスタンスの襲撃に対し撃退可能ならパンタシアに恩を売る形で対応。予想以上の戦力だった場合、速やかに避難。俺は避難する場合に備えて、救命ボートを確保・守るはずだった」
フルメン達、火炎の軍が出て来るなんて聞いていない。
チラリとゲフリーレンを見ると、そっと目を逸らされた。ーーーお前、何となくだが察していたな?
「ルカ、それよりも我々は探さなければならない人物がいる」
「人物だと?」
俺は誰の事を示しているのか分からず、首を傾げた。と、その時ゲフリーレンは俺の背後に気付き
「向こうが先に見つけてくれたようだぞ」
と、言う言葉に俺は振り返った。そこには赤髪赤目の女が人混みを掻き分けてやって来る所だった。
俺は安堵する。
「アイ、無事だったか」
「あぁ、それよりこれはなんだ?人がーーー」
と、その時。アイの言葉を遮る様に、近くで悲鳴が響いたのだった。