交錯編-別の世界の者?
だが、無関係ではない筈だ。
何故ならーーー
「貴女は栄光の方ですよね?」
なかなか声を出さない女性に、私は先に質問した。女性は頷く。
「えぇ、そうです。貴女は…」
「私は繁栄の世界から来ました。アイと申します」
私が繁栄の人間だと知ると、女性は納得した様な顔をしたのだった。しかし私は納得出来ない。
何故なら並行世界に存在する類似人物は、
繁栄の世界ではアイ
発展の世界では風見、
そして栄光の世界ではナギーーーの筈。
何故、私達とそっくりな存在がもう一人いる?
「まさか、ナギは別の世界の者?」
私の呟きは、誰にも聞こえなかった。
繁栄の人間だと分かり、私は納得する。そして恥ずかしくなってしまった。
自分とそっくりな容姿で色が違う存在など、別世界の存在に決まっているのに。
だがーーー何故だろう。先程助けてもらった時と違和感を覚える。
アイも何か複雑な表情を浮かべてた。
「あの、つかぬ事をお聞きしますが」
「なんでしょうか?」
先程とは逆の台詞になる私達。アイは口を開いたが、何と聞けばいいのか分からない、と言いたげに口を閉じてしまう。と、その時だ。
「!!」「きゃあぁ!」
船が大きく傾いた。折角立ち上がった身体はバランスを崩し、勢いよく床へと叩き付けられそうになる。ギュッと目を瞑って来たる痛みに耐えようとした時、アイの腕が私を抱き締めた。
「ありがとうございます」
私はアイにしがみ付きながら礼を述べる。と、その時、警報が鳴り響いた。
「これはっ!」
私は目を見開き、急いでアイに言った。
「急いで救命ボートへ!船が沈没しますっ」
船内で警報が鳴り響く。俺は押し寄せてくる客達から、目的の人間を探していた。
「いたっ!ゲフリーレン大臣っ!」
「ルカか、ナギから計画変更と言われたが何か知っているか?」
「…計画が変更された事を今知ったのですが」
俺の言葉に、ゲフリーレンは「そうか…」と気の毒そうな眼差しを向けてくる。俺は咳払いをして、強がって見せた。
「おそらく行き先が変更になった事だと予想できます」
「……」
俺の言葉にゲフリーレンは海の方へと目を向けた。ここからでも目視出来る程、菴羅に近付いている。
「…ナギめ、別件を巻き込んできたな」
「フルメンの胃が心配だ…」
確かに、とゲフリーレンも頷く。俺は何となくナギの思惑を察して呟いた。
「菴羅支部は現在、アルカナ派の物だからなぁ」