交錯編-よく避けるな
「計画が変更になった様ですーーー此方に」
と、私とそっくりの声色を持つ者は、統治者を何処かへと連れて行った。
「まさか、先程の…?」
考えられるのは、搭乗前に私を助けてくれた女性だ。だが、あの方の髪は赤である。この暗闇なら誤魔化せるかもしれないが、灯りが着いた途端にバレてしまうはず。
「照明がつく前に殺すつもり?」
そして罪を私に擦り付けるのか。わたしは真っ青になり、急いで統治者達の後を追ったのだった。
急に照明が落ちた。それを合図に、俺は行動を開始する。
「ナギの奴、一体何を考えてるんだか」
人混みを掻き分けて何度か人にぶつかりつつて、俺はメインホールを出た。向かう先は、
「おい、これって嵐が来るんじゃ…」
救命ボートが設置されているテラスへと出る。空を見上げれば、天気がおかしい。ここまでの悪天候だっただろうか?
と、その時である。
「!!」
背後から嫌な気配がして、俺は振り返り身を引いた。振り下ろされる剣。間一髪で避けた俺に、相手は睨んできた。
「侵入者ーーーレジスタンスか」
「邪魔をするな」
そう言って、相手は剣を突き出した。俺はギリギリで身を翻す。
しかし突きから流れる動作で横へと薙ぐ。俺は目を見開き、反射的に身を屈めた。
「よく避けるな」
「そりゃ死にたくないからなっ」
俺は冷や汗を垂らす。こいつ、めちゃくちゃ強い。ナギの訓練に付き合って、多少の心得があるお陰か、相手の強さがなんとなく分かる。
おそらく剣の打ち合いでもしたら、あっという間に負けるだろう。
「丸腰相手にふざけんなよ…」
俺は腕輪に触れようとした。剣や銃器の持ち込みは禁止されたが、これはバレなかったのだ。魔道具を発動させーーーようとした。
「丸腰か…」
相手が何故か剣を下げ、なんと鞘に収めてしまった。驚愕する俺に、相手は怪訝そうな顔をする。
「どうやら偶然居合わせただけのようだな。無用な争いはしない」
「はぁ!?」
相手の言い分に、俺は間抜けな声を出す。
「つまり、間違えて襲ってきたと?」
「不審な行動をしていた貴殿には非はあるぞ」
「いやいや、自分を正当化すんなよ」
なんだ、こいつ。と俺は頭を抱える。襲撃者だよな?
「あんた、もしかして騎士だったか?」
「…何故そう思う」
相手の目つきが厳しくなる。俺は「決めてはないけど」と前置きをした。
「しっかり剣術を学んだって感じがするし、なにより“貴殿”だなんて言い方、育ちがいい奴しかしない」
「……」
「それに、レジスタンスが基本使うのは銃器の類だ。秘密裏に制圧する為に、発砲音がする銃ではなく刃物を選んだとして、剣だこが出来るほど入念に準備したとは思えない」




