交錯編-お前の狙いは何なんだ?
この祝典は午前11時から始まり、夕方に終わる予定だ。休憩室として各人に部屋が当てられており、俺達は火炎の国の代表として出席している。
本当はナギがフルメンの代理として出席する予定だった。
「本来はフルメン中将が招待されていたのだろう?」
「あぁ、予定ではフルメン中将とその警護にナギだった筈だ」
それをナギがーーーと言うか、初めにフルメンがナギを代理にしたのである。そして警護に外部の人間である俺を指名した。
「そうした方が都合がいいだろう」
と、フルメンが気を遣ってくれたのである。それを
「アイに代理を頼んだから!」
と、ナギが無碍にしたのだ。これを聞いたフルメンは頭を抱え、俺はそっと胃薬を渡すと「すまない」とか細い声で礼を述べたのだった。
当時の回想から戻ってきた俺は、腕時計を見る。
時計の針は正午を指していた。
「1時間後にパーティーが始まるのか」
俺の言葉に、アイも部屋の置き時計で時間を確認する。その眼差しは少しばかり暗い。
「武器の持ち込みが出来ないのが、本当に落ち着かない」
アイの言葉の意味を知っている俺は、何とも言えない表情を浮かべた。アイは「すまない」と謝る。
「嫌味で言ったわけじゃないんだ、悪かった」
「大丈夫だ、分かってる。それに誰だってそう思う筈だ」
俺は心底申し訳ないと思う。そしてナギを少し恨めしくーーーそして心配になる。
何せ、レジスタンスが襲撃を計画していると事前に聞いているのだから。
ナギが何処からか仕入れて来た情報は、宣誓で述べられた。
「貿易回復の祝典で、パンタシアのレジスタンスによる襲撃がある」
何が嬉しいのか、ナギはニコニコっと笑いながら言葉を続けた。
「襲撃は船内パーティーが始まってから2時間後。そこそこ酒も回って緊張が緩んだ時間であり、そして」
ナギは一度言葉を切りる。にっこりと笑みを深め、
「パンタシアへ引き返す、折り返し地点に着く頃だ。航路を確認したら、海上のど真ん中だった」
客船は予定では北上するらしい。南方面には菴羅が近くにあり、ロシェクの大陸の事情を汲んで、逆方面を選んだようだ。
俺は溜息をつく。
「それで、お前の狙いは何なんだ?」
危険なら参加しなければいい。いや、それより事前にレジスタンスの計画を阻止すればいいのだ。それを、わざわざアイを呼び付けてまで乗ってやる必要は何なのか?