✴︎それで何が分かるんだよ?
1ページ飛ばして公開してました…。
18ページ前に一枚追加しております。
夜。小雨の中、私は駆ける。
「待て、村崎!!」
身体能力的には私の方が高いのだが、いかんせん地の利は向こうにあった。
特にこの街の地形は、村崎の能力と相性がいい。
まるで自分自身を追っているかの様な動きに、悪態をつく。
「浮遊能力がここまで厄介だとは…!」
村崎の能力は浮遊。
上下と言った、道がなくても進めるその逃走経路は、私を翻弄する。
だから気が付かなかった。
村崎の背中を追いかけるのに夢中で。
雨で視界が悪かった事も原因だろう。
橋の上で、ついに村崎を捕まえたと思った時だ。
「…じゃあね」
後ろで少女が呟いた。いつの間に!?と驚くよりも先に、足下が崩れる。
「まさかーー」
気付いた時には遅かった。そこは氷で作られた橋だった。
おそらく、何処にも捕まる事が出来ない橋のど真ん中の氷だけ薄くしたのだ。そして村崎は気付かれないよう浮遊して、私が薄氷を踏むのを待っていたのだろう。
私は重力に従うが、村崎はその力に逆らった。
建物の3階くらいの位置から、私だけ真っ逆さまに落下する。
私が割った箇所から、次々に氷が割れていく。
何処にも掴まる所がなく、手を伸ばすが空を掴むだけ。
ヤバイ。死ぬ。
そう思って走馬燈が見えかけた時、風が吹いた。
「お前にしては、ミスしたな」
そう言って私を助けたのは、日向だった。
風でゆっくりと地上に下ろされる。上を見上げると、既に村崎達はいなかった。
「日向っ!追えっ!あんたなら風で追えるだろ」
「無茶言うな。俺が風の魔法使いだろうと、そこまで万能じゃない」
風見なら出来るけどな、と首を竦める日向に、役立たず、と言うと「この場合、お前の能力の方がカスだろ」と反論された。
「と言うか、礼の一つも言えないのか」
「見逃してやってるだろ」
それでチャラだ。日向はジト目で「お前なぁ…」と見てくる。
「せっかく情報持ってきてやったのに」
ピッと折り曲げたメモを取り出す。私はすかさずそのメモを奪った。
調べて貰ったのは、過去にスイレンが行った託宣の内容だ。やはりそうか。
「それで何が分かるんだよ?」
と、日向は首を傾げるが、答えてやる義理はないので無視をした。
橋の上での出来事を、少し修正致しました。